韓国国会で演説する文在寅大統領=22日、ソウル(AFP時事)
韓国国会で演説する文在寅大統領=22日、ソウル(AFP時事)

 【ソウル時事】韓国人元徴用工への賠償を日本企業に命じた韓国最高裁判決から30日で1年。判決に端を発した日韓の対立は、輸出管理厳格化の応酬や韓国政府による軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄決定など貿易、安全保障分野にまで拡大。元徴用工問題をめぐる双方の立場の隔たりは依然大きいまま、相互不信は高まり続けている。

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 「日本企業の反人道的な不法行為を前提とする強制動員被害者の慰謝料請求権は、協定の適用対象に含まれていない」

 韓国最高裁は昨年10月30日、請求権問題は「完全かつ最終的に解決された」と明記された1965年の日韓請求権協定に反する判決を下した。

 日本政府は「国際法に照らしてあり得ない判断だ」(安倍晋三首相)と即座に反発。「国際法違反の状態の早急な是正」を求め、協定に基づく2国間協議を要請したが実現せず。韓国政府は日韓の企業が資金を拠出し、原告に慰謝料相当額を支払う案を今年6月に提案したものの、日本側に一蹴された。

 「深い不信感を乗り越える努力がなされていない」。日本政治に詳しい韓国の梁起豪・聖公会大教授は日韓両政府の取り組みに不満を漏らす。だが、「司法判断の尊重」を盾に日本企業の賠償を模索する文在寅政権と、請求権協定を理由に最高裁判決を「国際法違反」とする日本政府の溝は深い。

 文大統領は7月、「提示した案が唯一の解決策だと主張したことはない」と述べ、話し合いの余地があるとの認識を示した。だが、韓国政府は1月、賠償に向けて韓国政府と日韓企業が参加する基金設置構想について「発想自体が非常識だ」と否定した経緯もあり、韓国側の対応を求める日本側の不信は根深い。

 「若干の変化の兆しがうかがえることもあった」。天皇陛下の即位の礼に合わせて訪日した李洛淵首相は今月28日、安倍氏との会談の感想をこう語った。康京和外相も24日、6月の提案について「これを基本に協議をしようという趣旨だった」と説明。「今も隔たりは大きい」ものの、協議を通じて「少し狭まった面もある」と述べ、歩み寄りの可能性を示唆した。

 だが、年末以降には、最高裁判決に基づく日本企業の資産売却が待ち受ける。日本企業に実害が生じれば、日本側が対抗措置を講じ、対立の激化は避けられない。容易には「不信の連鎖」を断ち切ることができない日韓だが、梁氏は「双方に責任がある。互いが一歩ずつ下がって解決すべきだ」と強調した。