[ワシントン 19日 ロイター] – トランプ米大統領のウクライナ疑惑を巡る弾劾調査で、国家安全保障会議(NSC)でウクライナ問題を担当するビンドマン陸軍中佐は19日、下院情報特別委員会の公聴会で、米大統領が選挙戦での対立候補の捜査を外国に要請したことは「不適切」だったとの認識を示した。
トランプ大統領の弾劾調査を巡る一連の公聴会はこの日で3回目。トランプ氏が7月25日のウクライナのゼレンスキー大統領との電話会談でバイデン前米副大統領親子を捜査するようウクライナに要求した疑惑が焦点の1つとなっている。
ビンドマン中佐は、ペンス副大統領の外交顧問を務めるジェニファー・ウィリアムズ氏とともに証言に臨んだ。両者とも問題となっている7月25日の電話会談を聞いていた。
ビンドマン氏は公開証言で、「米大統領が選挙戦での対立候補の捜査を外国に要請することは不適切だった」と表明。「会談を傍聴していて耳を疑った。ある意味、対ウクライナ政策を巡って最も恐れていたことが起きているようでショックだった」と胸の内を明かした。
またウィリアムズ氏も会談内容は国内の政治問題に関わると感じられ、異常かつ不適切だったとした。ウィリアムズ氏はこれまでに非公開で証言し、トランプ氏の発言が「不適切だと感じた」などと発言。これに対しトランプ大統領は17日、ウィリアムズ氏に対し、「ネバー・トランパー(何が何でもトランプ氏を認めない人)」だとツイッターで攻撃した。
こうした中、元ウクライナ担当特別代表のカート・ボルカー氏は、会談でトランプ氏がバイデン氏に関する調査を実際に依頼したとは認識していなかったと指摘。「後から考えれば、違和感を感じるべきだった。そうすれば私なりに異議を唱えていたはずだ」と述べた。
ビンドマン中佐は公聴会に軍服姿で出席。大統領の弾劾調査で証言する公務員に対する攻撃は「非難に値する」とし、「見解の相違が存在し、活気ある討議が行われるのは建国時から自然なことだった。個人攻撃を行うほどわれわれは落ちぶれていない」と述べた。
米当局者は匿名を条件に、ビンドマン氏が自身の身の安全に懸念を感じており、陸軍は同氏の安全に関する検討を行っていることを明らかにした。安全面での懸念があれば、ビンドマン氏が家族と共に軍施設内に移り住む可能性もあるが、現時点ではこうした懸念は出ていないとしている。
ビンドマン氏の家族は旧ソビエト連邦出身。傍聴席の父親へのメッセージとして、「きょう、米国の首都で議員を前に証言していることは、より良い生活を求めて旧ソ連から米国に移住した40年前の決定が間違いではなかったことの証明となる」と述べた。