[パリ 21日 ロイター] – 経済協力開発機構(OECD)は21日発表した経済見通しで、世界の経済成長率予想を2019年、20年ともに2.9%とし、20年の予想を9月時点の3.0%から小幅下方修正した。日本については、今年と20年の予想を据え置いた。 

21年については、貿易戦争から中国経済の予想外の急減速まで、数多くのリスクが抑制されているという前提で3.0%に若干回復すると予想した。 

OECDは、より重大な懸念として、各国政府が、気候変更やデジタル化、共産主義凋落後に台頭した多国間主義の揺らぎといった世界的な課題に対処しきれていないことを挙げた。 

OECDのチーフエコノミスト、ローレンス・ブーン氏は報告書で「これらの変化を金融・財政政策で対処できる一時的要因と考えれば政策のミスとなる。これらは構造的なものだ」と指摘。これらの問題について政策が明確な方向性を欠けば「不確実性が高まり続け、成長見通しに打撃を与える」とした。 

主要国については、米国の今年の成長率予想を9月時点の2.4%から2.3%に下方修正した。2017年の減税効果が剥落し、貿易相手国・地域の低迷が背景。20年と21年については2.0%と予想。さらなる利下げは、成長が下振れした場合にのみ正当化されるとした。 

日本は、今年と20年の予想をそれぞれ1.0%、0.6%で据え置き、21年は0.8%から0.7%に下方修正した。 

中国については、今年の成長率予想を9月時点の6.1%から6.2%に若干上方修正した。しかし、貿易摩擦や、輸出から内需に軸足を移す構造変化に伴い経済は減速傾向をたどるとみて20年は5.7%、21年は5.5%と予想した。 

ユーロ圏は、今年が1.2%、20年は1.1%と、それぞれ9月の予想から0.1%ポイント上方修正し、21年は1.2%と予想した。ユーロ圏各国が投資を拡大させなければ、欧州中央銀行(ECB)の量的緩和再開の効果は限られると警告した。 

英国経済の見通しは、合意なき欧州連合(EU)離脱リスクが後退して幾分改善。今年の成長率は1.2%、20年が1.0%と、いずれも9月の予想(1.0%、0.9%)から上方修正された。21年は1.2%と予想した。 

OECDの最新の予想は以下のとおり。 

2019 2020 2021 
World 2.9 2.9 (3.0) 3.0 
G20 3.1 3.2 3.3 (4.6) 
Australia 1.7 2.3 (2.0) 2.3 (2.1) 
Canada 1.5 1.6 1.7 (1.8) 
Euro area 1.2 (1.1) 1.1 (1.0) 1.2 (1.3) 
Germany 0.6 (0.5) 0.4 (0.6) 0.9 (1.2) 
France 1.3 1.2 1.2 (1.3) 
Italy 0.2 (0.0) 0.4 0.5 (0.9) 
Japan 1.0 0.6 0.7 (0.8) 
Korea 2.0 (2.1) 2.3 2.3 
UK 1.2 (1.0) 1.0 (0.9) 1.2 
US 2.3 (2.4) 2.0 2.0 (1.8) 
Argentina -3.0 (-2.7) -1.7 (-1.8) 0.7 (0.6) 
Brazil 0.8 1.7 1.8 (2.0) 
China 6.2 (6.1) 5.7 5.5 
India 5.8 (5.9) 6.2 (6.3) 6.4 (6.6) 
Indonesia 5.0 5.0 5.1 
Mexico 0.2 (0.5) 1.2 (1.5) 1.6 
Russia 1.1 (0.9) 1.6 1.4 (1.3) 
Saudi Arabia 0.2 (1.5) 1.4 (1.5) 1.4 (1.5) 
South Africa 0.5 1.2 (1.1) 1.3 (1.6) 
Turkey 0.3 (-0.3) 3.0 (1.6) 3.2 (2.3)