【パリ時事】5日に始まったフランス政府の年金改革に反対する大規模ストライキにより、交通機関がまひするなど影響が全土に広がっている。マクロン大統領はかねて「わが国に必要なこの改革は必ず実現させる」と主張している。政府は近く改革の具体案を発表する予定だが、国民の反発が収まらなければ混乱が長引く恐れがある。
マクロン氏は、現在職業ごとに42種類存在する年金制度を一本化し、被保険者を平等に保障する改革案を検討している。また、62歳の退職年齢を維持しつつ、給付開始年齢が高いほど受給額を引き上げる仕組みも導入する方針。
年金制度の赤字額は、2025年には79億~172億ユーロ(約9500億~約2兆600億円)に達するとみられている。マクロン氏は、改革により赤字を解消し制度を健全化させたい考えだ。
これに対し、早期退職などの優遇制度がある国鉄の職員らが既得権益を守ろうと猛反発。その他の労働者からも「就労年数が延びる」「制度が不透明だ」などと反対の声が上がっている。
最近の世論調査では76%が「年金改革は必要だ」と答え、「必要ない」の24%を上回った。国民の大半は改革の必要性を認識しているものの、「自分の受給額が減るのは嫌」というのが本音だ。
国民の反発を受けてフィリップ首相は11月下旬、改革の施行を25年に先送りする譲歩案を表明。政府報道官もストを受け、「交渉の余地はある」と述べた。
年金改革はフランスでは鬼門だ。1995年、当時のシラク政権は約3週間にわたる大規模ストを受けて改革を断念した。昨年から続く反政府抗議デモ「黄色いベスト運動」もストに乗じて勢いを盛り返しつつある。マクロン氏は就任以来最大の試練に直面している。