- 大企業・製造業5ポイント悪化、非製造業プラス20と1ポイント悪化
- 19年度大企業・全産業の設備投資計画6.8%増、為替想定は107円83銭
日本銀行が四半期ごとに実施している企業短期経済観測調査(短観)の12月調査で、大企業・製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)はゼロと、9月の前回調査(プラス5)から悪化した。市場予想のプラス3を下回った。悪化は4四半期連続で、2013年3月調査(マイナス8)以来の低水準となる。先行きはゼロと横ばいを見込む。
米中貿易摩擦の長期化など世界経済の先行き不透明感が続く中、10月の消費増税に伴う駆け込み需要の反動減と自然災害が加わり、企業心理がさらに悪化した。大企業・製造業では、自動車が2011年6月以来の低水準に落ち込むなど、16業種中11業種で悪化。大企業・非製造業の業況判断DIはプラス20と前回から1ポイント低下。小売りが14年12月以来のマイナスに転じるなど、12業種中6業種で悪化した。
キーポイント |
・景気が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた割合を引いたDIは大企業・製造業がゼロと前回調査から5ポイント悪化ーブルームバーグ調査の予想はプラス3 ・非製造業はプラス20と1ポイント悪化-予想はプラス16 ・先行きは製造業がゼロと横ばい、非製造業はプラス18と悪化を見込む ・19年度の大企業・全産業の設備投資計画は前年度比6.8%増-前回6.6%増 ・19年度の為替想定は1ドル=107円83銭と前回(108円68銭)から円高方向に設定 |
エコノミストの見方
ニッセイ基礎研究所の上野剛志シニアエコノミスト:
- 非製造業は思った以上に堅調だった一方で、製造業が弱い。世界経済の減速傾向が長引く中、消費増税の反動減の影響が特に自動車で大きく出た。台風の影響による生産停止も効いている
- 内需は設備投資計画も含めて底堅さを維持しており、消費増税の反動減は時間がたてば和らいでいく。東京五輪関連の需要も期待でき、持ち直していく。景況感や景気そのものは、先行きは持ち直していく可能性は高い
- 短観は、景気が持ち直していくという日銀のシナリオのサポート要因。製造業のマインドは悪化しているが、設備投資や研究開発投資に大きく影響していない。非製造業のマインドが底堅く、消費増税の影響もそれほど大きくない。日銀による追加緩和の必要性はますます低下したという評価
三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所の宮嵜浩シニアエコノミスト:
- 増税後に予想以上の駆け込み需要の反動や景況感の下振れがあったので、やはり経済対策に対してあまり大きな期待はしていないということ。消費増税への警戒感が表れていると思う
- 製造業は、悪材料として米中貿易交渉の不透明感がある一方、好材料としては中国の景気に底入れの兆しが出てきている。そういったところが交錯して横ばいになっているのだろう
- 内需に左右される中小の非製造業で足元も先行きも下振れが大きい。今まで外需が不透明な中で内需が支えていると説明されてきたが、内需の堅調さに陰りが出てきた
第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミスト:
- 短観自体は景気後退の入り口に迫っているような内容だったが、米中貿易摩擦を巡る今日の一部合意報道が確かだとすればこれは大きい。日本経済が何とか踏みとどまれる可能性が高まった。景気もセンチメントも上向いていく可能性が高い
- 意外にも非製造業が底堅かった。前回の増税時と比べると下げ幅が小さい
- 設備投資も強い。全体的に内需はまだ踏ん張っていると評価でき、日銀が景気の見方を変えなければいけないような内容ではなかった。来週の決定会合では政策維持の可能性が高い
詳細(日銀の説明)
- 米中貿易摩擦、海外経済の減速などを懸念する声が幅広く聞かれた
- 先行き判断、米中貿易摩擦の緩和や海外経済回復への期待と不透明感強いとの声が拮抗(きっこう)している
- 台風の影響に関しては大企業・製造業からは一部で聞かれたのみ。中小企業ではそれなりにあった
- 自動車などでは増税後の反動減を懸念する声も聞かれた
- 建設、物品賃貸なとでは五輪需要のピークアウトを懸念する声もあった
- 大企業製造業の業況判断の先行き下げ止まり、政府の景気対策との声はそれほど聞かれていない
- 想定為替の円高見通し、夏場の円高など踏まえ下期を慎重にみている面も
- 解答基準日は11月27日、それまでに約7割が解答
背景
- 政府は5日、台風19号など相次ぐ自然災害を受けた復旧・復興や景気下振れリスクに対応するため、新たな経済対策を閣議決定
- 日銀の雨宮正佳副総裁は12日の講演で、消費増税の個人消費に対する下押し圧力は前回増税時よりも「小幅にとどまる可能性が大きい」と発言。ただ、人々のマインドや物価動向を通じた影響などに注意が必要としている
- 日銀は10月の金融政策決定会合で政策金利のフォワードガイダンス(指針)について、物価安定目標に向けたモメンタム(勢い)に注意が必要な間は、「現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している」と追加緩和を意識した表現に修正した