[東京 19日 ロイター] – 日銀の黒田東彦総裁は19日、金融政策決定会合後の会見で、超長期ゾーンの金利について「もうちょっとスティープになっても良いのではないかと思っている」と述べた。市場関係者の見方は以下の通り。
<三菱UFJモルガン・スタンレー証券 シニア・マーケットエコノミスト 六車 治美氏> 黒田東彦日銀総裁は、金利目標の短期化について今は考えていないとする一方、超長期金利はもっとスティープ化してもいいとの見方を示した。イールドカーブをスティープ化させるには、どのような政策の組み合わせがいいか、債券の年限ごとに投資家の需要も異なるので、より実務に近い担当者を中心に検討されていくのではないか。ただ、金利目標の短期化については、金利上昇方向の施策になるので、現在の金融緩和局面では採用されることはないとみている。 足元の円債市場では、イールドカーブはスティープ化ではなく、ベアフラット化している。日本の超長期金利がスティープ化するには、海外金利が上昇することなどが必要であり、「他力本願」となりそうだ。
<大和証券・チーフマーケットエコノミスト 岩下真理氏> 「イールドカーブはもう少しスティープ化した方がいい」と、にっこりと笑顔で発言したのはとても印象的だった。この根底には、世界経済を今後注視していかなければならないとしつつも、見通しに対して明るい兆しがあると思っていることがあるのではないか。政府の経済対策による実体経済への具体的な影響を織り込んだ1月の展望レポートで2020年度の成長率見通しが引き上げられ、それに伴い需給ギャップの改善が続くことから、物価見通しも引き上げれられる可能性がある。また、海外金利もスティープニングし始めているため、超長期金利は自然とスティープ化するという意図があるのだろう。
国際通貨基金(IMF)が提言した金利目標の短期化については、27日に公表される12月の「金融政策決定会合における主な意見」で、短期化についての意見がなければ、「今は考えていない」という黒田日銀総裁の発言通りということだ。
将来的に金利目標の短期化に踏み切るのは、現行の政策枠組みを見直す機運が高まった時だ。景気がある程度改善し、物価も大きく下がらない状況になった時に、マイナス金利の撤廃と金利目標の短期化を同時に行うのではないか。マイナス金利深掘りの副作用のための、金利目標の短期化は考えていないとみている。
<みずほ証券 チーフ債券ストラテジスト 丹治 倫敦氏> 超長期金利はもう少しスティープ化してもいいと発言したが、あくまで希望的見方の範囲だろう。イールドカーブを立たせるには、具体的なオペの減額などが必要だが、マネタリーベースの増加ペースを落とさないためには、もはや、そうおいそれとできない。今回決定された貸出増加支援資金供給の見直しも、マネタリーベースの増加ペースが落ちるのを避けるねらいがあったとみている。
国際通貨基金(IMF)が提案した金利目標の短期化についても、具体的なオペ減額などを伴わなければ、長い金利を押し上げる効果は乏しくなる。2%の物価目標と紐づけたオーバーシュート型コミットメントを掲げる限り、マネタリーベース拡大は維持されなければならず、現状の枠組みでは、こうした政策の採用は難しいだろう。