報道陣の取材に応じるトランプ米大統領(左)とメラニア夫人=12月31日、フロリダ州パームビーチ(AFP時事)
報道陣の取材に応じるトランプ米大統領(左)とメラニア夫人=12月31日、フロリダ州パームビーチ(AFP時事)

 【ワシントン時事】北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射などを示唆した後も、北朝鮮の非核化を外交実績にしたいトランプ米大統領は、米朝交渉の継続にいちるの望みを託している。「正恩氏は約束を守る男だ」と強調し、非核化を目指す合意を守ると期待感を表明した。ただ、米国はICBM再発射など不測の事態への備えにも迫られている。

 トランプ氏は12月31日、フロリダ州の別荘で「正恩氏とは非常に良い関係にある」と述べ、3度の首脳会談実現で築いた個人的な関係をてこに緊張を緩和したい考えをにじませた。11月の大統領選を前に北朝鮮危機の再燃を避けたいからだ。ポンペオ国務長官もFOXニュースのインタビューで「正恩氏が衝突と戦争ではなく、平和と繁栄を選ぶことを願っている」と呼び掛けた。

 これに対し、米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は「こうした発言は戦略でなく希望のように聞こえる」と指摘。「トランプ氏の最大の誤算は個人的な関係に過剰に信頼を置いたことだ」と批判した。

 エバンス・リビア元国務副次官補は、正恩氏が昨年末に明らかにした新方針の狙いについて「脅迫や最後通告、大胆な行動の示唆で米国に圧力をかけ、交渉では得られなかった譲歩を引き出すことだ」と解説。「非核化は(交渉の)テーブルの上にはなかった」と述べ、北朝鮮にはそもそも非核化に応じる意思はないとの見方を示した。

 正恩氏がトランプ氏との約束を破り、核実験やICBM発射の再開に踏み切れば、昨年の短距離弾道ミサイル発射を静観してきた米国も何らかの対応に踏み切らざるを得なくなる。オブライエン大統領補佐官(国家安全保障担当)は12月29日、「米国は多くの選択肢を持っている」と強調した。

 米シンクタンク「スティムソン・センター」のジョエル・ウィット上級研究員は「可能な限り制裁を厳格化すべきだ」と主張。大規模な米韓合同軍事演習の再開やミサイル防衛の強化などの対抗措置も必要になると訴えた。