平壌で12月28~31日に開かれた朝鮮労働党中央委員会総会に出席した金正恩党委員長=朝鮮中央通信が1日配信(AFP時事)
平壌で12月28~31日に開かれた朝鮮労働党中央委員会総会に出席した金正恩党委員長=朝鮮中央通信が1日配信(AFP時事)

 【ソウル、ワシントン時事】北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が昨年末の党中央委員会総会で、核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射の再開を示唆したことで、非核化をめぐる米朝対話は崩壊の危機に立たされた。正恩氏が総会で言及した「新たな戦略兵器」の実験を強行すれば、朝鮮半島情勢をめぐる緊張が再燃する可能性が高まり、関係国は危機感を深めている。

 北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は昨年末の党中央委員会総会で、北朝鮮が先行して非核化措置を講じたにもかかわらず、米国は相応の措置を果たしていないと非難した。その上で「約束に一方的に縛られる根拠はなくなった」と述べ、2018年4月に中止を決めた核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射の再開を示唆した。朝鮮中央通信が1日報じた。

 北朝鮮の非核化を目指す米朝交渉が停滞する中、正恩氏は対話重視の方針を転換、強硬姿勢を前面に押し出した。11月の米大統領選を見据えつつ、北朝鮮は軍事的挑発を仕掛けるとみられ、朝鮮半島情勢は緊迫の度を増しつつある。

 正恩氏は総会で、米国の核の脅威が高まる中、「未来の安全を放棄できない」と述べ、「世界は遠からず新たな戦略兵器を目撃することになる」と表明。「敵視政策を最後まで追求するならば、朝鮮半島の非核化は永遠にない」と強調し、米国が制裁解除や軍事演習中止などに応じるまで戦略兵器開発を続ける考えを示した。

 北朝鮮は米朝交渉で一方的に昨年末を期限とし、米側の譲歩を求めたが、米国は態度を軟化しなかった。正恩氏は「時間稼ぎだ」と批判した上で「人民が受けた苦痛の対価」を受け取るため「衝撃的な実際の行動に移る」と警告した。

 一方、トランプ大統領は12月31日、正恩氏の発言を受け、滞在先のフロリダ州の別荘で記者団に「彼は約束を守る男だ」と語った。正恩氏とも「非常に良い関係にある」と言及し、北朝鮮に交渉継続を促している。

 正恩氏も総会では交渉中止に踏み込まず、トランプ氏を名指しして批判することは控え、良好な関係は維持したい考えをにじませた。一方で「抑止力強化の幅と深度」は米国次第で調整され得るとも指摘した。米国の出方をうかがいつつ、核・ミサイル開発を進める狙いがあるとみられる。

 正恩氏は、国際社会の制裁が続くとして、「自力更生の力で敵の制裁を破綻させる正面突破戦にまい進すべきだ」と呼び掛け、内部の結束を図った。米国の圧力に屈しない対決姿勢を国内向けに強調した形で、米朝対話への機運は急速に失われつつある。