- イランの地対空ミサイルが撃墜と英、カナダ首相-「証拠ある」
- イランはミサイルによる撃墜でないと「確信」、撃墜説は「心理戦」
8日早朝にウクライナ国際航空の旅客機がイランの首都テヘラン近郊で墜落した事故について、イラン民間航空当局はミサイルによる撃墜ではないとの見解をあらためて示し、カナダや英国、オーストラリアの主張に異議を唱えた。
イラン民間航空機関の責任者を務めるアベドザデ氏は10日、同国国営テレビで、イランは墜落機がミサイルによって撃墜されたのではないと「確信」していると主張。これに先駆けてイラン政府は、撃墜説を「心理戦」だとし、事実ではないと否定していた。
それでもイランは乗員乗客176人全員が死亡したボーイング「737ー800」型旅客機の事故調査で、カナダや米国を含む各国に参加を呼び掛けている。乗客の3分の1余りを占めていたカナダは、調査を支援するためチームを派遣すると表明。米運輸安全委員会(NTSB)は状況を注視していると発表した。
カナダのトルドー首相は9日にオタワで記者団に対し、同盟国を含む複数のソースからの情報は「旅客機がイランの地対空ミサイルにより撃墜されたことを示唆している。恐らく意図的ではなかっただろう」と述べた。
ジョンソン英首相も、ウクライナ国際航空の752便がイランの地対空ミサイルにより撃墜された証拠があるとの声明を9日に発表。「われわれはカナダおよび国際的なパートナーと緊密に協力している」とした上で、「徹底的かつ透明な調査が必要だ」と訴えた。
オーストラリアのモリソン首相も10日のラジオインタビューで、同国にも同様の情報があることを明らかにした。トルドー首相から説明を受けたと別のインタビューで語った。ウクライナのゼレンスキー大統領は同日、ミサイルによる撃墜の可能性を排除はしないが、「きょうの時点では」確認されていないと述べた。
調査の事情に詳しい関係者1人が匿名を条件に語ったところでは、ジェット旅客機の離陸数分後に空港に近いイランの防空システムから地対空ミサイル2発が発射された様子を米国の偵察衛星が捉えており、旅客機の近くでその後爆発が起きた。
航空機やヘリコプター攻撃用のロシア製短距離防空ミサイルで「ガントレット」や「トール」の名称でも知られる「SA-15」の関与が疑われるという。
米紙サイトが動画を掲載
米紙ニューヨーク・タイムズのウェブサイトは9日夜、イランのミサイルがテヘランの空港近くで旅客機に命中する様子を撮影したとみられる動画を掲載。同紙によれば、被弾した際に小爆発が起きたが、旅客機は爆破しなかったという。
地対空ミサイルは航空機に命中した後、機体の小さなくぼみの模様や破片による遺体の損傷、フライトレコーダーが記録したデータなど、証拠となる独特の痕跡を残す。
米国の元事故調査員ロバート・スウェイム氏は「被弾した場所はどこもショットガン(散弾銃)で撃たれた模様のように見える。鋭い小さな裂け目が集中する場所が存在する」と説明。墜落現場でこうした模様の破片が見つかれば、何が起きたかすぐに見分けられるはずだという。
原題:Iran Steps Up Rejection of Claims That Missile Downed Boeing JetMissiles Leave Tell-Tale Signs That Should Solve Iran Jet Puzzle(抜粋)