昨年12月の米雇用統計では、労働市場の勢いが弱まったことが示唆された。雇用者数の伸びが鈍り市場予想も下回ったほか、前年同月比の平均時給も2018年半ば以来の低い増加率にとどまった。失業率は半世紀ぶりの低水準を維持した。

キーポイント
・12月の非農業部門雇用者数(事業所調査、季節調整済み)は前月比14万5000人増
 ・ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想の中央値は16万人増
 ・11月は25万6000人増(速報値26万6000人増)に下方修正された
・家計調査に基づく12月の失業率は3.5%予想中央値3.5%
 ・11月も3.5%
・平均時給は前年同月比2.9%増予想
 ・中央値3.1%増
 ・11月は3.1%増
 ・伸びが3%に届かなかったのは2018年7月以来
U.S. employment cooled at end of 2019, while wage growth stumbled

  雇用者数については前月より小さな伸びを見込んだ市場予想におおむね沿っているとも言えるが、平均時給は失業率が示すほど労働市場がタイトでないことを示唆している。

  ウェルズ・ファーゴのチーフエコノミスト代行、ジェイ・ブライソン氏は「賃金の伸びがなぜ加速しなかったのか、実に疑問だ」とコメント。「人々のインフレ期待が極めて低いままだという基本的な事実が一因かもしれない」とした上で、より広く捉えれば「労働市場は現時点で堅調を維持している」と述べた。

  生産部門と非管理職の労働者の平均時給は12月に前年同月比3%増。10月には3.6%増と、10年ぶりの大きな伸びを記録していたが、急激に鈍った。

  ただ、クドロー米国家経済会議(NEC)委員長はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、「生産部門とサービス部門の労働者の賃金増は、幹部クラスの賃金の伸びを依然として上回っている」と述べた。

  2019年は下期に雇用の伸びが勢いを増したものの、年間では211万人増と、11年以来の低い伸びとなった。

「U6」は改善

  12月雇用統計の明るい材料は、「U6」と呼ばれる不完全雇用率が6.7%に低下したこと。これは1994年にさかのぼるデータで最も低い水準。U6にはフルタイムでの雇用を望みながらもパートタイムの職に就いている労働者や、仕事に就きたいと考えているものの積極的に職探しをしていない人が含まれる。一部のアナリストは、この指標の方が実際の労働市場の状況をより正確に反映しているとみて注目している。

  平均時給は前月比では0.1%増で、こちらも予想中央値(0.3%増)を下回った。労働参加率は63.2%で11月と同水準。

  FSインベストメンツの米国担当チーフエコノミスト、ララ・レーム氏はブルームバーグテレビジョンで、今回の雇用統計は「米金融当局の動きを何ら変えるものではない」と指摘した。

  非農業部門雇用者数の伸びは、前月分までの下方修正を受けて過去3カ月平均では18万4000人増と、昨年7月以来の低さとなった。12月の民間部門の雇用者数は13万9000人増。市場予想の中央値は15万3000人増だった。政府部門は6000人増。

  製造業は1万2000人減少と、市場の増加予想に反してマイナスとなった。小売りは4万1000人増。教育・ヘルスケアは3万6000人増だった。

  統計の詳細は表をご覧ください。

原題:U.S. Jobs Trail Forecasts; Wages Rise Least Since Mid-2018 (3)(抜粋)