[ジュネーブ 23日 ロイター] – 世界保健機関(WHO)は23日、中国で感染が拡大する新型コロナウイルスによる肺炎への対応で、前日に続き緊急委員会の会合を開き、「国際的な公衆衛生上の緊急事態と判断するには時期尚早」との判断を下し、緊急事態の宣言を見送った。ただ情勢を緊密に注視しているとし、事態を見守る姿勢を強調した。 

WHOのテドロス・アダノム事務局長はジュネーブのWHO本部で行った記者会見で「中国では緊急事態になっているが、まだ世界的な緊急事態には至っていない」と説明。その上で「WHOは現時点では人の移動や貿易に広範な制限を設けることは推奨しない」と表明した。 

16人の独立専門家からなる緊急委の会合では意見が分かれたと明かした。中国の対応については適切と判断されるとし、「対策が有効かつ短期間で済むよう期待している」と語った。 

ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のピーター・ピオット教授は、感染が重大局面を迎えていると指摘。「今回の決定にかかわらず、感染を食い止めるため一層の国際協力と資源の強化が重要になる。各国当局とWHOは引き続き事態を注視しなければならない」と述べた。 

中国河北省の保健当局は23日、新型肺炎で80歳の患者が22日に死亡したと発表した。新型コロナウイルスが検出された湖北省以外では初の死者となる。中国国内での死者数はこれで18人になった。 

中国国営テレビによると、新型肺炎の発症者は634人に達した。中国交通運輸省は新型肺炎の封じ込めに向け、発生した武漢市の実質的な封鎖に乗り出し、武漢と行き来するシャトルバスやフェリーの運行を全面的に停止。武漢市も公共交通機関の運行を停止した。 

武漢市の人口は約1100万人。WHOの中国代表を務めるガウデン・ガレア氏は「これほどの大規模な都市封鎖は前例がない」と話した。武漢に隣接する皇崗も24日から公共交通機関の運行を中止する。 世界保健機関(WHO)は23日、新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大で緊急委員会を開き、「国際的な公衆衛生上の緊急事態と判断するには時期尚早」との判断を下した。

今回の新型ウイルスに対するワクチンや特効薬はまだない。症状としては発熱やせき、呼吸困難などが挙げられる。感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)は23日、3つの異なる研究チームが新型コロナウイルスのワクチン開発に向けた作業を開始したと明らかにした。 

WHO健康危機対応プログラムを統括するマイケル・ライアン氏は、発症者の4人に3人は40歳以上で、約4割が基礎疾患を有していると指摘した。 

米国務省は23日、新型肺炎の流行に伴い、中国国内での旅行に一層注意するよう呼び掛けた。