[東京 29日 ロイター] – 経営再建を急ぐ日産自動車(7201.T)が追加リストラ策として新たに2工場の閉鎖と、米国・欧州を中心にした事務系社員4300人以上の人員削減を検討していることが関係者への取材で明らかになった。カルロス・ゴーン前会長の拡大路線で一段と低下した収益力の立て直しを目指す。社内には2020年3月期(今期)決算にリストラ費用を計上すると、営業赤字に転落する可能性を指摘する声もある。 

複数の関係者によると、人員削減は米テネシー州とスイス・ジュネーブ近郊のロールにある地域統括会社の販売・マーケティング担当者などが対象。日本の本社を含め他の地域にも影響があるとみられる。 

広告宣伝費も含めたマーケティング部門の経費は、年間の固定費2兆1000億円のうち約45%に相当する1兆円近くを占めており、追加リストラ策で大幅な抑制策を講じる。 

また、ゴーン氏の下で肥大化した生産能力も約4割が稼働していないという状況を踏まえ、2工場を閉鎖して生産効率を高める。 

日産は業績回復に向けて、昨年7月に事業改革計画を発表。23年3月期までに売上高14兆5000億円(今期予想は10兆6000億円)、営業利益8700億円(同1500億円)、営業利益率6%台(同1.4%)を目指す目標を掲げた。 

同時に、23年3月期までに米国、メキシコ、インド、日本など世界14拠点で働く工場従業員計1万2500人以上を削減。世界の生産能力を19年3月期(前期)の720万台から23年3月期に660万台へ減らし、工場稼働率を前期の69%から23年3月期に86%へ高める方針を打ち出していた。 

しかし、昨年11月に今期業績予想を引き下げたため、事業改革計画で掲げた収益目標の達成は一段と難しくなった。新たなリストラ策では、追加の人員削減・工場閉鎖に加え、不採算車種の廃止・統合をさらに進める一方、新車の開発スピードを加速し、商品ラインアップの平均車齢(新車が販売・登録されてからの年数)を5年から2年半に短縮する目標なども検討。固定費の削減、事業展開や投資の効率化で3000億円、販売成長で1800億円の利益改善を確実に実現したい考えだ。 

ゴーン氏は販売の急拡大を狙って生産能力を増強、新モデルを相次いで追加し、インド、ロシア、南アフリカ、東南アジアなどの市場に積極進出した。だが、車種が増え、平均車齢も高くなった結果、販売促進・マーケティング費用が膨張。多くのモデルで販売目標も達成できていない。 

日産車の販売は世界的に落ち込んでおり、19年の米国での販売台数は約10%減。中国市場ではトヨタ自動車(7203.T)が9%増、ホンダ(7267.T)が8.5%増と伸ばす一方、日産は1.1%減だった。同社は今期の世界販売計画を従来の554万台から昨年11月に524万台へ下方修正したが、関係者によれば、さらなる下振れは避けられない見通しだ。 

販売不振を受け、社内には今期は20年1―3月期だけでなく、通期の営業損益も前期の黒字から一転、赤字に陥る可能性があると懸念する声もある。追加リストラを断行しても、23年3月期の収益目標は達成が難しいとの見方も出ている。 

経営陣に近い関係者は「(業績立て直しは)待ったなしの状況。将来、日産をきちんとした会社にするならば(改革を)一生懸命、フルスピードでやらなければならない」と話し、再建努力の遅れに危機感を募らせている。 

取材協力:白木真紀 編集:北松克朗、田中志保