[ワシントン 30日 ロイター] – 米商務省が30日発表した2019年の実質国内総生産(GDP)速報値(季節調整済み)は前年比2.3%増と、16年以来3年ぶりの弱い伸びとなった。2.9%増だった18年に続き、トランプ政権の成長率目標である3%を2年連続で下回った。貿易摩擦に伴う設備投資の低迷が経済の重しとなった。
トランプ政権と共和党が1兆5000億ドル規模の減税政策を導入したにもかかわらず、3%の成長率目標は達成できていない。トランプ大統領は減税政策によって成長率が目標を上回る状態が続くとの見通しを示していた。
ただ、輸入の減少により米経済は第4・四半期に緩やかなペースで伸び続けた。米連邦準備理事会(FRB)が19年に3回利下げしたことが史上最長の景気拡大を維持し、悪化を防いだことがうかがえる。米経済の景気拡大は11年間続いている。
カドロー国家経済会議(NEC)委員長はGDP統計を受け、FOXビジネス・ネットワークに対し「米経済は基本的に健全だ」と述べた上で、経済活動は今年加速するとの見方を示した。ただトランプ政権外でこうした見方が広く共有されているわけではない。
FRBは前日、政策金利を据え置いた。パウエルFRB議長は記者団に対し、米経済が「緩やかに伸び続ける」との見通しを示した上で、中国で発生したコロナウイルスの感染拡大などのリスクがあることも認めた。
18カ月間続く米中貿易摩擦を背景に、19年は景気後退(リセッション)入りが不安視された。米中が今月、第1段階の合意に署名したことで景気見通しは改善したものの、米国は中国からの輸入の3分の2に相当する3600億ドル規模の中国製品に対する関税を維持しており、エコノミストは第1段階の合意に景気押し上げ効果はないとみている。
第4・四半期GDPは年率で2.1%増で、市場予想と一致。第3・四半期も同じペースで伸びた。第4・四半期は金利の低下で自動車や住宅、その他の高額商品の購入が増えたほか、政府支出も加速し、在庫の鈍化を相殺した。
国内需要を計るために用いる貿易と在庫、政府支出を除くGDPは年率で1.4%増と、第3・四半期の2.3%増から鈍化し、4年ぶりの低水準となった。エコノミストは、物価上昇を引き起こさずに長期間成長できるペースを約1.8%増と試算している。
MUFG(ニューヨーク)の首席エコミスト、クリス・ラプキー氏は「米経済が今年も堅調に推移するには、昨年末時点ですでに燃料が切れかけていた」とし、「米経済が良い位置に付けていられるのは、貿易戦争で輸入価格が上昇し、米国の企業や消費者が輸入を手控えたからにほかならない」と述べた。
設備投資は第4・四半期に1.5%減だった。3四半期連続で落ち込み、マイナスが続いた期間は09年以来の長さだ。ガスや石油の立坑・油井を含む住宅以外のインフラや機器への投資が減った。
貿易摩擦を背景に景況感が悪化し、資本支出が低迷している。企業トップの景況感は第3・四半期に10年ぶりの低水準に落ち込んだ後、第4・四半期も低迷した。景況感が近く回復する見込みは薄い。
米航空機大手ボーイング(BA.N)が今月、問題となっている旅客機737MAXの生産を停止したことも設備投資の重しとなっている。737MAXは2件の墜落事故が続いた後、昨年3月に運航停止となった。
エコノミストの間では、ボーイングのこの生産停止で今年第1・四半期の米経済成長率は少なくとも0.5%ポイント下押しされるとの見方が出ている。
米経済の3分の2以上を占める個人消費は第4・四半期に1.8%増と、好調に伸びた第3・四半期の3.2%増から鈍化した。インフレ調整後の家計の可処分所得は1.5%増。伸びは第3・四半期の2.9%から鈍化した。
第4・四半期は米国の対中関税が一因で輸入が減り、貿易赤字が縮小。貿易は第4・四半期GDPを1.48ポイント押し上げる方向に働いた。押し上げ効果は09年以来最大となる。
ナロフ・エコノミック・アドバイザーズ(ペンシルバニア州)の首席エコノミスト、ジョエル・ナロフ氏は「貿易が消費よりも大きく経済成長の押し上げに貢献している状態は正常ではない」と述べた。
また、自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)(GM.N)で起きた40日間のストライキで自動車在庫が減った。在庫投資は65億ドルと、18年第2・四半期以来の低水準だった。第3・四半期は694億ドルだった。在庫投資は第4・四半期にGDPを1.09%ポイント押し下げる方向に働いた。