きのう、トランプ大統領が行った一般教書演説が面白かった。中身のことではない。演壇でこれを読み上げる大統領、後ろの議長席から見守るペンス副大統領と民主党のペロシ下院議長。この3人が織りなすパフォーマンスが、分裂する米国、引き裂かれる米国を象徴しているように見えた。ちょっと振り返ってみよう。登壇した大統領は演説のコピーを議長席にいるペンス氏とペロシ氏に手渡した。手渡したあとペンス副大統領と握手したが、トランプ大統領はペロシ氏が差し出した右手を無視して議会正面に向き直ってしまった。差し出した手を引っ込めたペロシ氏は、所在無げに自席に着席した。

テレビのニュースでこの場面をみながら、「握手ぐらいすれば良いのに」と個人的には思った。演説が進むにつれて議場から共和党員の拍手が沸き起こる。ペンス副大統領はその都度立ち上がって一緒に拍手していた、一方のロペス議長は憮然とした表情で無視、トランプ大統領に視線を向けることもほとんどなかった。演説の中身はNHKによると、「偉大なアメリカの再起」をテーマに、「内政や外交・安全保障でみずからの実績を最大限アピールしました。秋の大統領選挙での再選に向けて幅広い支持を訴えたい思惑があるとみられますが、野党・民主党との深刻な対立が随所で浮き彫りとなりました」とある。

面白かったのは演説終了間際のペロシ議長のパフォーマンス。トランプ大統領から手渡された演説原稿を、立ち上がって引き裂きはじめたのである。いくつかに分けて引き裂いたあと、ポイッと議長席の真ん中に投げ捨て、まるで価値がない演説とでも言いたげなパフォーマンスだった。あとで声明を発表したペロシ氏は、「(演説は)虚偽のマニフェスト」と批判、トランプ大統領と対峙する姿勢を鮮明にした。いずれにしてもこのシーンは、共和党と民主党という二大政党の亀裂の大きさを示していると同時に、左右に引き裂かれる米国を象徴しているように見えた。この場面は米国の憲政史に永遠に記録され、多くの有権者に末長く記憶されそうな気がした。