勤務医の働き方改革が改定の柱の1つだ

厚生労働省は7日、医療サービスの公定価格である診療報酬について、4月に改定する内容をまとめた。勤務医の負担軽減が柱で、救急車の受け入れ台数が多い大病院の入院料に5200円を上乗せする。病院が職員を増やして医師の働き方改革を進めるための原資となる。紹介状のない軽症患者による大病院の受診を減らす対策も強化し、医療の質を高める。

厚労相の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)に示した。中医協が加藤勝信厚労相に改定内容を答申する。

2020年度は診療報酬の2年に1度の改定年度。20年度予算案の編成過程で、薬の公定価格(薬価)を引き下げて医療費全体の1.01%分を抑制する。一方、医師らの技術料や人件費は0.55%分増やす。この財源の枠のなかで各医療サービスの料金を調整した。

改定の柱の一つが勤務医の働き方改革だ。一般的に月80時間の残業は「過労死ライン」とされるが、勤務医の1割は月155時間を超えるとみられている。疲弊した医師による診療は医療の安全性からも問題だ。

医療体制を守りながら負担を軽減するには医療従事者を新たに雇う必要がある。この原資として救急車の受け入れ件数が年2000件以上の大病院の入院料に5200円を上乗せする。対象は約900病院で、医療費ベースで年350億円程度になる。

5200円のうち患者は1~3割を負担する。ただ公的医療保険には月の患者負担に上限を定める「高額療養費制度」がある。手術を伴う入院医療は高額になり、この制度の対象になることが多い。この場合は5200円が上乗せされても患者の負担増はわずかにとどまる見込み。

まずは地域の身近なかかりつけ医を受診してもらう対策も進める。紹介状のない患者が大病院を外来受診する際に初診で5000円以上、再診で2500円以上の追加負担を義務付ける病院も増やす。

現在は大学病院など高度医療を担う病院と、地域医療の拠点病院のうち400以上のベッドがある病院が対象だ。これを200床以上まで広げる。病院数は420施設から670施設になる。

大病院の負担も緩和できる。診療所と中小病院では日ごろの診療、大病院では手術や入院といった役割分担を強める。

重症向けの入院医療では高額な入院基本料を取りにくくする。現在、病院が1日あたり1万6500円の最高額を得るには重症患者の割合が30%以上になることが必要だ。基準を31%に引き上げる。最高額を得ていた1500病院のうち2~3割が対象から外れる見通しだ。

国民医療費は18年度に42兆円を超え、高齢化に伴って膨張が続くと見込まれる。どう効率化するかは今後も課題となる。

このほか、妊婦が医療機関で診療を受けると自己負担が上乗せされる「妊婦加算」は廃止する。妊娠に関係ない診療でも負担増になる仕組みが批判され凍結していた。

代替策として、医療機関同士で患者の診療情報を共有して丁寧な診療につなげる場合に医療費1500円(患者負担は1~3割)を上乗せする仕組みを設ける。対象は妊婦に限らず、患者の同意を条件とする。