[ワシントン 7日 ロイター] – 米労働省が7日発表した1月の雇用統計は、非農業部門の雇用者数が前月から22万5000人増と、伸びが加速した。1月は比較的暖かかったため、気候に左右されやすい部門で雇用が増えた。設備投資の低迷が悪化する中でも米経済が緩やかに伸び続ける可能性を示唆した。市場予想は16万人増だった。 

ただ今回の統計では2018年4月から19年3月までの雇用者数が51万4000人分下方改定された。09年以来の大幅な年間改定だ。雇用の伸びが今年、急減速する可能性がある。 

11月と12月の雇用者数は合わせて7000人分上方改定された。ただ2月は雇用の伸びが鈍化するとみられる。新型コロナウイルスによって中国で何百人もの死者が出たほか感染が世界中に拡大する中、アップル(AAPL.O)などのテクノロジー企業を中心にサプライチェーンに混乱が生じているためだ。 

設備投資が低迷している期間は09年以来の長さだ。その要因となった19カ月間続く米中貿易摩擦が雇用に与えている打撃を雇用統計は完全に組み込んでいないとの見方がある中、年間の雇用者数の下方改定は注目されるとみられる。労働省は創業・廃業した企業数から雇用件数を算出しているが、年間の雇用者数が大幅に改定されることは、算出方法に問題があることを示唆する。雇用の伸びが減速基調にある局面で、統計では雇用者数が実際より多く見積もられる傾向があるとエコノミストは指摘する。今回の改定は金融市場による労働市場の健全性の判断に影響する可能性があるとも言う。 

雇用の伸びの減速は労働力不足と労働需要の縮小によるものだ。ただ雇用の伸びは、鈍化する中でも依然として労働年齢人口の伸びを維持するのに必要な約10万人を上回っている。 

労働省はまた、雇用や労働参加率などの世帯調査における人口推計を改定した。失業率は世帯調査から算出されるため、1月の失業率は前月と直接比べることはできない。世帯調査から算出するほかの統計も同じことが言える。 

労働省が同時に公表した調整後の失業率は3.6%と、前月から0.1%ポイント上昇した。 

労働参加率は0.2%ポイント上昇の63.4%と、13年6月以来の高水準だった。 

労働市場の引き締まりに伴い賃金は安定的に伸びている。時間当たり平均賃金は0.2%(7セント)増だった。12月は0.1%増加していた。1月の前年同月比は3.1%増と、12月の3.0%増から加速した。 

米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は1月、米国の労働参加率はほかの先進国と比べて「労働供給が多く、賃金を抑制している可能性がある」と指摘した。それでもなお、賃金の伸びによって個人消費はそこそこのペースで伸び続け、経済を下支えするとみられる。米経済は19年に2.3%増と3年ぶりの弱い伸びだった。18年は2.9%増だった。20年の伸びは約2%との予想だ。エコノミストはインフレを引き起こさずに米経済が長期間伸び続けられるペースを1.8%としており、それをやや上回るとの見方だ。 

雇用統計の内訳は、建設業が4万4000人増と、19年1月以来、1年ぶりの大幅な伸びだった。輸送・倉庫業は2万8000人増。宅配便業者や配達人の雇用が伸びた。娯楽・観光は3万6000人増加した。 

一方、製造業は1万2000人減った。12月は5000人減っていた。製造業は米中貿易摩擦によって最も打撃を受けている。米中は1月に第1段階の合意に署名したものの、米国は中国の輸入品の約3分の2に当たる3600億ドル規模の中国製品に課す関税を維持している。 

米航空機大手ボーイング(BA.N)が墜落事故を起こした旅客機737MAXの生産を1月に停止したことも製造業の重しだ。ボーイング最大の供給業者であるスピリット・エアロシステムズは先月、737MAXの生産停止を受けカンザス州ウィチタの施設で20%の人員削減を行う計画を明らかにした。 

政府部門は1万9000人増だった。10年ごとの国勢調査に伴う採用があった。 

オックスフォード・エコノミクスのシニア米エコノミスト、リディア・ブッソワー氏は「1月の力強い雇用創出と堅調な賃金の伸びにより、過去最長の経済成長がなお続く余地があることが改めて示された」と指摘。「ただ、労働市場の成熟化を示すデータもある。雇用者数の下方改定は、市場が過去2年以上そう見えたように若々しい状態にないことを示唆している」と述べた。 

ブリーン・キャピタルのシニア経済アドバイザー、コンラッド・デクワドロス氏は「今回の指標はFRBに労働市場をホットな状態で維持させようと思わせるもので、隠れたスラック(需給の緩み)がまだあるという考えや賃上げは緩やかという評価がその根拠になる」と述べた。