ソフトバンクグループの孫正義社長にとって、米携帯電話子会社スプリントのTモバイルUSによる買収が米司法当局に承認されたことは朗報となりそうだ。ソフトバンクG株は1年ぶりの急騰となった。

12日の日本株市場でソフトバンクG株は買い気配で始まり、取引成立後は一時13%高の5794円と大幅に6日続伸。上昇率は自社株買い発表を受けた昨年2月7日(18%)以来となり、同7月30日以来の高値水準を回復した。

ニューヨーク市の米連邦地裁は11日、TモバイルUSによる265億ドル(約2兆9000億円)規模のスプリント買収計画を承認した。複数の州が買収阻止を目指して起こした訴訟は、Tモバイルと親会社のドイツテレコム、スプリントを傘下に置くソフトバンクG側が勝った。スプリントの株価は11日の取引で78%高と急騰し、米国株市場もこの材料を評価した。

Day Two Of The World Economic Forum (WEF) 2020
Masayoshi Son

今回の買収が完了すれば、孫氏のバランスシートから約400億ドルの純負債が取り除かれる。孫氏にとっては自社株買いのほか、昨年7月に出資総額1080億ドルでの設立を発表したビジョン・ファンド2の投資資金の確保に向け、柔軟性が増すことになる。

野村証券の増野大作アナリストは12日のリポートで、同社の米国通信アナリストは合併が成立する可能性が80%まで高まったとみていると指摘。スプリント株の上昇は「ソフトバンクグループにとりポジティブ」で、成立すればバランスシートから負債が外され、クレジットリスクへの低減が見込めるとしている。

合併後の新会社はTモバイルの名称で運営される。月決め契約の携帯電話サービス加入者数は約8000万人とAT&Tの7500万人を上回り、ベライゾン・コミュニケーションズの1億1400万人に迫る規模となる。

Tモバイルのマイク・シーバート最高執行責任者(COO)は発表資料で、早ければ4月1日の合併完了を目指すと表明。ただし、合併の完了には裁判所での手続きや両社間の未解決問題などが残る。

ソフトバンクグループ株の昨年来推移