[ニューヨーク 28日 ロイター] – ニューヨーク外為市場ではドルが対円で7週間ぶりの安値を付けた。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて景気の下支えに適切に対応すると表明したことで、利下げ観測が一段と高まったことが背景。 

パウエル議長はこの日の午後に声明を発表し、「米経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)は依然として力強い一方、新型ウイルスが経済活動へのリスクとして台頭している。FRBは種々の動向や経済の先行きへの影響を注視しつつ、景気の下支えに向けあらゆる手段を活用しながら適切に対応する」と表明した。

円は対ドルJPY=で一時107.52円まで上昇。終盤の取引では1.51%高の107.92円。1日の上昇としては2017年5月以来の大きさとなる。 

主要6通貨に対するドル指数=USDは終盤の取引で0.324%安の98.127。米利下げ観測が高まる中、週初からの下落率は約1%に達した。 

市場では、FRBが3月の連邦公開市場委員会(FOMC)で少なくとも25ベーシスポイント(bp)の利下げを実施する確率が完全に織り込まれているが、パウエル議長の声明を受け、これよりも早い時期に利下げに踏み切る可能性があるとの見方も台頭。ダイヤモンドヒル・キャピタルの最高投資責任者(CIO)、ビル・ゾックス氏は「市場で利下げ観測が高まっていることで、FRBは3月17─18日の次回FOMCより前に利下げに動く可能性もある」と述べた。 

この日はアフリカのナイジェリアのほか、バルト3国の1つであるリトアニアなど6カ国が国内初の感染例を報告。世界保健機関(WHO)はこの日、新型ウイルスの感染拡大リスクについて、世界全体の評価を「非常に高い」に引き上げた。危険性評価で最高水準となる。

TD証券のグローバル外為戦略部門責任者、マーク・マコーミック氏は「先週は円はもはや安全通貨ではないと見なす動きも出ていたが、円は現在は先週の水準と比べると格段に上昇しており、適切な水準に戻した」と指摘。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)によるリバランスの動きも円の支援要因になっているとの見方を示した。 

ドル/円 
 NY終値 108.07/108.10 
   始値 108.68 
   高値 108.86 
   安値 107.52 

ユーロ/ドル
 NY終値 1.1025/1.1028 
   始値 1.0993 
   高値 1.1045 
   安値 1.0952