[28日 ロイター] – 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は28日、声明を発表し、米経済は引き続き底堅いものの、新型コロナウイルスの感染拡大が経済へのリスクになっており、景気の下支えに向けFRBとして適切に対応すると表明した。ただ、米経済は引き続き全般的に良好に推移しているとの認識を示した。
議長は「米経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)は依然として力強い一方、新型ウイルスが経済活動へのリスクとして台頭している。FRBは種々の動向や経済の先行きへの影響を注視しつつ、景気の下支えに向けあらゆる手段を活用しながら適切に対応する」と述べた。
声明は1段落で3行のみだが、FRBが3月の連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げするとの観測が高まる中で発表され、今回の声明により、新型ウイルスの感染拡大が続き経済に影響を及ぼせば、FRBに政策対応の意思があることが示された。実際、声明発表を受け、急落していた米株価は下げ幅を縮小する場面もあった。
IIIキャピタル・マネジメントの首席エコノミスト、カリム・バスタ氏はパウエル議長の声明が発表される前に、「『FRBは状況を注意深く監視しており、経済への影響について結論づけるのは時期尚早だが、持続的な拡大に向け金融政策でできることを行うと約束する』といった内容の『再保険』的なインタビューをパウエル議長がなぜ行わないのか不明だ」と述べた。
ノーザントラストのエコノミスト、カール・タンネンバウム氏は「新型ウイルスに起因するリスクにより、FRBは春にも利下げに踏み切る」との見方を示した。
パウエル議長が声明を発表するまで、FRB当局者は米経済指標が新型ウイルスの影響をまだ受けていないとの事実に重点を置き、新型ウイルスは封じ込められ、経済が影響を受けたとしてもわずかなものにとどまるとの見方を示していた。ただこの日、市場では緩和観測が高まり、FRBがこうした観測を無視するのは難しい状態になっていた。
パウエル議長は2019年6月に通商政策を巡る先行き不透明性に直面した際、「適切に対応する」との表現を使用。この表現を使った2週間後のFOMCでFRBは利下げは見送ったが、7月に25ベーシスポイント(bp)の緩和に踏み切った。FRBはその後、9月と10月に25bpの追加利下げを実施している。
今回の声明で新型ウイルスに起因するリスクを「台頭しつつある(evolving)」と形容し、景気を「支援(support)」するためにあらゆる手段を利用すると表明したことで、パウエル議長はより大きな幅で、より速いペースの利下げに道を開いた可能性がある。
FRBのフェデラル・ファンド(FF)金利誘導目標は現在1.50─1.75%。短期金融市場では、3月17─18日のFOMCで1.00─1.25%に引き下げられる確率が80%を超えていることが織り込まれているほか、7月までに0.50─0.75%に引き下げられるとの予想も出ている。