【ブリュッセル時事】欧州連合(EU)とEUから離脱した英国との貿易協定や外交・安全保障をめぐる交渉が2日からブリュッセルで始まる。双方の主張の対立はすでに鮮明で難航は必至だ。英国は大枠が固まらなければ、6月の決裂も辞さない構えを見せている。
焦点の貿易関係では、関税や数量制限のない自由貿易協定(FTA)締結を目指すことで一致している。ただ、思い抱く具体像は食い違う。
EUは、英国が大幅に規制緩和を進めて不当に競争力を高める事態を警戒。公平さを確保するため、FTA締結の条件として雇用や環境保護、国家補助や税制などのルールをEU水準に合わせるよう英国に迫る。
しかし、英国は「EUルールの受け入れを伴う必要はない」(ジョンソン首相)と拒否の姿勢。EUと「カナダ型」のFTAを締結することを目標に据える。一部に関税が残り税関検査などの制約も生じるが、英国はルールの裁量を確保でき、最重視するEUからの「経済的、政治的独立」を果たせる。
バルニエEU首席交渉官は「英国はカナダではない」と指摘。EUとの地理的、経済的結び付きの深さを理由にルール一致の必要を訴えるが、歩み寄りは見通せない。
このほか漁業権でも衝突は不可避だ。EUは英領海内での沿岸加盟国の漁獲枠の安定的確保を要求。6月までの決着をもくろむが、ジョンソン氏は「素晴らしい海の富」の実権を取り戻すと息巻く。
一方、ロンドンの金融街シティーの地位を維持したい英国は、英企業の金融サービスを従来同様にEUで提供することを可能にする認定を6月までに出すようEUに求めている。ただ、EUは可否判断はあくまで一方的に行うと強調。駆け引きを始めている。
6月末は年末までの英国の「離脱移行期間」の延長を決定する期限でもある。新たな英EU関係への円滑な移行を占う上で大きなヤマ場となる。