民主党のスーパーチューズデーでバイデン氏が躍進した。14州で行われた大統領予備選挙で同氏は10州を制覇、4州で勝利したサンダース氏を圧倒した。だが、獲得した代議員の数は、ABCテレビによるとバイデン氏が433人、サンダース氏が388人と拮抗している。いずれ撤退を余儀なくされるとみられる左派のウォーレン氏の36人を加えれば、米民主党内は左右どちらが優勢なのか、相変わらず情勢は微妙だ。トランプ大統領と戦って勝つのは右か左か、両勢力の党内の戦いはこれから本格化するとみて間違いないだろう。バイデン氏に勢いがありそうな気もするが、果たしてどうか。

そんな中でちょっと気になる記事があった。ブルンバーグによると「バイデン氏は民主党内のエスタブリッシュメント(既得権層)の支持を固めたとみられる。エスタブリッシュメントらは、サンダース氏が民主党候補になった場合、トランプ大統領に勝てないのではないかと懸念している」。ブティジェッジ、クロブシャーの両氏が撤退して民主党の中道派が一本化された。その結果が今回の予備選挙だった。民主党内で相変わらず既得権層が強い影響力を持っている証でもあった。もっと言えば、民主党内エスタブリッシュメントの復活である。そう考えた途端に思い出したのが、四年前の大統領選挙だ。

泡沫候補とみられていたトランプ氏は、共和党内の既得権層、つまりエスタブリッシュメントと対峙することによって大統領への道を切り開いた。オバマ大統領の8年間で閉塞感が強まっていたアメリカで同氏は、徹底的に非エスタブリッシュメントとして行動した。良い悪いは別にして、これが本選を制覇する原動力になった。そして、トランプ流の新しい政治が始まった。同じことがいま民主党内で起ころうとしている。穏健社会主義者を自認するサンダース氏は、健康保険改革を筆頭に旧来の民主党の穏健路線を左から覆そうとしている。トランプ氏とサンダース氏の戦いになれば、エスタブリッシュメントを間に挟んで、右と左から有権者の奪い合いという構図が出来上がる。そうなれば大統領選の争点がより明確になる気がするのだが・・・。