特措法に基づく緊急事態宣言が発令された。これによって国内の感染拡大が収まるかどうかわからないが、結果が良くなることを期待したい。宣言は従順で穏やか、衛生観念に長けた日本人を対象にした社会的実験でもある。法律に基づいて強権的にロックダウン(都市封鎖)を強行する世界の大勢から見れば、日本方式は極めて特殊な感染対策に映るだろう。布マスクの配布が「アベノマスク」と揶揄されたように、「これで新型コロナに立ち向かうのは無謀だ」、そんな批判が各国から聞こえてきそうな気がする。だが、これで感染拡大を防止できれば、日本方式は世界から絶賛されるだろう。摩訶不思議な方式が世界を驚嘆の渦に巻き混む可能性がないとはいえない。
なにごとにもタイミングというものがある。今回の宣言に向かって神風が吹くことだってある。さまざまな危機を巧妙にすり抜けてきた安倍首相に寄り添う“運”があるかもしれない。そこで新型コロナをめぐる明るい兆候を今朝のニュースの中から探してみた。意外にその兆候はあった。まず、トランプ大統領、「感染はピークに近づきつつある」との認識をきのう示した。感染者の増加曲線モデルがピークアウトを示唆しているという。医療崩壊のイタリア。きのうは新たな感染者が3月13日以来最少になった。これを受けて政府は「ロックアウト」の緩和を計画しはじめたとある。中国はきょう武漢の封鎖を解除した。あの武漢だ、1月23日に封鎖されて以来、2カ月半ぶりの解除である。
6日にICUに移されたジョンソン英首相の容態は安定しているという。ニュヨーク州のクオモ知事も最近、最悪事態は通り過ぎたとの認識を示している。宣言を発令したタイミングは絶妙だった可能性もある。今回の宣言を世界はどう見ているのだろう。NHKによるとニューヨーク・タイムズは「日本はこの数か月間、他の国が取っているような厳しい措置をとることなく、感染者を抑えてきたことで世界を当惑させてきた。今回の緊急事態宣言は惨事を避けるのに間に合ったのか、それとも遅すぎたのか、専門家も判断できずにいる」と戸惑う。誰も結果がわからない日本の社会的実験。新型コロナウイルスはせせら笑っているのかもしれないが、日本方式の成功を八百万の神に祈ろう。
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