【ニューヨーク時事】国連安全保障理事会の北朝鮮制裁決議の履行状況を調べる制裁委員会の専門家パネルは17日、年次報告書を公開し、北朝鮮が洋上で荷物を積み替える「瀬取り」を中国のはしけ船との間で行い、石炭の密輸出を続けていたと指摘した。加盟国による受け入れが原則禁止されている北朝鮮の出稼ぎ労働者が、制裁逃れのため就労ビザ以外で外国に入国した例も報告した。

北朝鮮、瀬取りで「上限超過」=米など石油輸出停止要求-国連安保理

 決議は北朝鮮による石炭の輸出を禁じているが、報告書によると、北朝鮮は2019年1月から8月の間に、石炭370万トン(推定3億7000万ドル=約398億円=相当)を輸出した。うち推定280万トンは、北朝鮮籍船から中国のはしけ船へ積み替えられ、ある加盟国からの情報では、長江沿いの複数の施設などに運ばれたという。

 報告書はまた、北朝鮮が19年も「違法な核・ミサイル計画を停止せず、向上させ続けている」と分析。北朝鮮が輸入量を規制されている石油精製品を、上限を超過して輸入している可能性も指摘した。

 出稼ぎ労働者については、2000人が中国に訪問ビザで入国した疑いがあると明記。ただ、中国はパネルに対し「出稼ぎ目的の入国は確認できない」と回答した。ロシアでも19年、北朝鮮人に対する観光ビザや就学ビザの発給数が急増していた。

 このほか、医療協力のためモザンビークに入った北朝鮮人の医師が違法な診療所を開き、罪に問われているとの報道も報告した。