- ECBは一定の上限を設定したが、市場はそれを試そうとしている
- 各国政府が今後必要になる国債発行額は巨額になると予想される
ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)が総額5400億ユーロ(約63兆円)の新型コロナウイルス対策で合意してわずか1週間余りだが、市場の緊張が再燃し、危機と闘う欧州中央銀行(ECB)の負担軽減に十分でないとの根強い懸念が浮き彫りになった。
結論から言えば、7500億ユーロ相当の新たな臨時資産購入プログラムの発表からわずか1カ月で、ユーロ圏の借り入れコスト抑制の責任が再びECBの肩にのしかかっているようだ。
新型コロナ感染拡大で最も打撃を受けるユーロ圏の高債務国イタリアやスペインとドイツとの国債利回りスプレッド拡大が、ECBの政策担当者を悩ませている。これはユーロ圏で繰り返されるソブリン債の混乱に付き物だが、困窮する国への支援を政治問題化しようとするドイツやオランダのポピュリストが新たな要素として加わった。
ABNアムロ銀行のマクロ&金融市場調査責任者ニック・コウニス氏は、ECBが金融刺激を今月さらに5000億ユーロ(約58兆円)拡大すると予測。「イタリア国債市場の動きが最も差し迫って引き金になる可能性が高い。ECBは3月18日に明らかに一定の上限を設定したが、市場はそれを試そうとしている」と指摘した。
投資家がECBに挑戦するほど大胆になるかもしれない理由の一つとして、各国政府が今後必要とする追加の国債発行額が巨額になることが挙げられる。推計では数千億ユーロに達すると予想され、全てを消化できるか疑問だ。
ユーロ圏財務相が合意した5400億ユーロの新型コロナ対策は、救済基金である欧州安定化メカニズム(ESM)からの与信枠提供が主な柱であり、これも各国の債務負担増につながる。
「コロナ債」と呼ばれる共同債を発行すれば、新型コロナで打撃を被る国の財源確保が容易になるが、財政規律を重んじる加盟国は国家主義者の反発に国内でさらされる危険があり、このアイデアを退けた。
アリアンツのシニアエコノミスト、カタリナ・ウテルモール氏は「コロナ債が今のところ検討対象から外され、EU(欧州連合)レベルでかなりの財政負担が共有されない現状では、ECBの負担の大きさが際立つ」との見解を示した。
原題:ECB Is Back at Crisis Front Line in Echo of Past Debt Sagas (1)(抜粋)