アメリカで新型コロナウイルスの感染者が最も多いニューヨーク州は20日、住民の血液にウイルスへの抗体があるかどうかを調べる「抗体検査」を始めたと発表しました。地元の知事は外出制限の緩和や経済活動の再開に向けた判断材料の1つとする考えですが、抗体がある人が再び感染する可能性など不明な点も指摘されています。
抗体検査は人の血液に含まれるウイルスへの免疫反応で作られる物質、「抗体」の有無を調べる検査で、検査の時点で症状がなくてもその人が過去に感染したことがあるかどうかを知ることができます。
新型コロナウイルスの感染者が24万7000人余りとアメリカで最も多いニューヨーク州では、20日、住民を対象にした抗体検査が始まりました。
対象となるのは無作為に選ばれた住民3000人で、地域の食料品店などに検査所が設けられ、指から血液を採取します。
州の保健当局によりますと1週間ほどで結果がわかるということです。
クオモ知事は「検査の結果から実際に感染した人の人口に対する割合がわかり、これらの人は当面、ウイルスへの免疫があると考えられる。外出制限の緩和や経済活動再開の時期を判断する上でのデータになる」としています。
抗体検査は全米各地で始まっていますが、WHO=世界保健機関の専門家は「抗体のある人が再び感染しないかは誰にもわからない」と述べ、新型コロナウイルスの抗体や免疫に関しては不明な点が多いと指摘していて、検査結果が政策判断にどう活用されるか注目が集まっています。
ヨーロッパ 国によって判断分かれる
抗体検査をめぐってヨーロッパでは国によって判断が分かれています。
このうちオランダは抗体検査の導入に積極的で、国の保健機関、オランダ公衆衛生環境研究所は先月、子どもを含むおよそ6000人を対象に抗体の研究を始めたと発表しました。
研究では3年前に国内で行った血液検査のサンプルと、同じ対象者から新たに採取した血液を比較するということで、どれだけの割合の人が抗体を獲得したかが把握できるとしています。
研究は1年半にわたって続けられ、抗体の有効な期間についても明らかになる可能性があるとしています。
また、オランダの血液バンクは今月上旬、18歳以上のおよそ7000人を対象に抗体検査を行いました。
これまでに対象者のおよそ6割について血液の分析が終了し、このうちおよそ3%の人に抗体ができていることが確認されたということです。
血液バンクは、来月にも同じ規模の検査を行ってさらに分析を進めるとともに、得られたデータについても政府に提供するとしています。
一方、イギリスは抗体検査の実施にはまだ時間がかかるとしているほか、フランスは慎重な姿勢を崩していません。
イギリス政府は抗体検査を実施する方針で、専門家グループが自宅で検査が簡単にできる検査キットの検証を進めていますが、実施に踏み切るほどの十分な結果は得られていないとしています。
このため、今の段階で抗体検査を進めれば国民が誤った認識を持つことになるとして実施にはまだ時間がかかるとしています。
また、フランス政府は抗体を持つことによって本当にウイルスに感染しないのか、抗体がどのくらいの期間有効なのかなど不明な点も多く、抗体検査の信頼性も高くないとして実施そのものに慎重な姿勢です。