- 駐チェコ大使だった金平日氏は昨年平壌に呼び戻された
- 正恩氏の健康状態が不確かな今、最高権力者の後継候補との指摘も
北朝鮮が存在する限り、建国者である故・金日成主席の息子のうち唯一生き残っている金平日氏は最高権力者の後継候補として考えられてきた。おいに当たる金正恩朝鮮労働党委員長の健康状態が不確かな今、再びその可能性が取り沙汰されつつある。
金平日氏(65)は、日成氏を継いだ二代目の最高権力者、金正日氏の異母弟。正日氏との後継者争いに敗れた平日氏は約40年にわたりハンガリー、ブルガリア、フィンランド、ポーランド、チェコの駐在大使などを務め、昨年北朝鮮に呼び戻された。
平日氏は後継候補から事実上排除され、国営メディアが言及することはほぼなく、政権掌握を本格的に狙えるだけの権力基盤を本国で築いたことは一度もない。にもかかわらず、一部の北朝鮮ウオッチャーは正恩氏の後を継ぐことになるのではないかとみている。建国者の血を受け継ぐ男子だから、というのがその主な理由だ。
北朝鮮の元駐英公使で2016年に韓国に亡命した太永浩氏は、北朝鮮の保守的な男性幹部らは正恩氏の妹である与正氏への権力委譲に抵抗するだろうと指摘する。与正氏が女性で、30歳と比較的若いためだ。
「問題は、与正氏率いる北朝鮮が持続可能ではなさそうだという点だ」とし、与正氏を筆頭とする集団指導体制では混乱に陥りかねないと述べた。「これを避けるため指導部の一部は、自宅軟禁中の金平日氏を権力の中枢に担ぎ出そうとするだろう」との見方を示した。
平日氏が一族の中で生き残ったのは、正恩氏が自身に挑戦できる存在だと見なしたことが決してなかったことを示唆しているのかもしれない。北朝鮮帰国前は駐チェコ大使の地位にあったが、当時チェコ外相だったルボミール・ザオラレク氏は「平日氏のスタイルや身のこなしは韓国人のようだった」と印象を振り返る。「言うべきことには常に注意を払いつつ、常に完全に筋が通っていた。他の北朝鮮の人に比べて、欧州ではるかに自由な生活を送ってきたように見受けられる」と語った。
原題:Kim Jong Un’s Uncle Suddenly Relevant After Four Decades Abroad(抜粋)