【ソウル時事】韓国の文在寅大統領は10日、就任3年に合わせた演説で、新型コロナウイルス対策で韓国が「世界をリードする国となった」と強調した上で、「ポストコロナ時代における国際協力をリードしていく」と述べ、北東アジア地域の防疫協力などで主導的な役割を果たすことに自信を示した。北朝鮮とも防疫分野の協力を中心に対話再開を模索する考えを表明した。
文政権は感染拡大を抑制できていることを最大限にアピールし、4月中旬に行われた総選挙でも与党を圧勝に導いた。最新の世論調査では、文氏の支持率は70%を超えており、コロナ対策での評価を前面に打ち出すことで、残り任期2年の「レームダック(死に体)化」を回避し、政権運営で主導力を発揮したい考えだ。
文氏は演説で韓国の防疫対策が「世界の標準になった。国家の地位と国民の誇りはいつにも増して高まった」と強調した。ただ、韓国では新たに集団感染が発生し、10日も新たに34人の感染確認が発表された。文氏は「防疫の手綱を緩めてはいけない」と警告するとともに疾病管理本部の疾病管理庁への再編など態勢強化の方針を明らかにした。
感染対策に自信を示す一方で、文氏は「わが国経済が受ける被害も実に甚大だ」と経済難への危機感を表明。輸出の激減や失業拡大などの状況が深刻だとして、「経済危機の克服に全ての力を集中させる」と主張し、5Gインフラ構築などで雇用を創出する「韓国版ニューディール」の推進を宣言した。
南北関係をめぐっては、米朝対話を優先してきたこれまでの立場を転換し、感染症対策など国連制裁に抵触しない分野で先に南北対話を進める意思を確認。「コロナの状況が落ち着いたら、対話し説得していく」と強調した。