新型コロナウイルスにまだ感染していない人の約半数が、すでに免疫を一定程度持っている可能性があるとする研究結果を米ラホイヤ免疫研究所の研究チームが近く米科学誌セルで発表する。過去に他のコロナウイルスに感染した経験が影響したとみられている。感染や重症化をどの程度防ぐ力があるかは不明だ。
研究チームは、流行が始まる前の2015~18年に米国で収集された20~60歳代の保存血液20人分を調べ、約半数から新型ウイルスを認識する免疫細胞「ヘルパーT細胞」を検出した。
ヘルパーT細胞は、「免疫の司令塔」とも呼ばれ、ウイルスを攻撃する抗体を別の免疫細胞「B細胞」に作らせるなどの役割がある。研究チームは、風邪の原因となる通常のコロナウイルスに感染した経験によって、免疫系が新型ウイルスも認識できるようになる「交差免疫」が起きたと考えている。
新型ウイルスによる感染症は、多くの人が無症状や軽症であることが知られる。奥村康・順天堂大特任教授(免疫学)は「コロナウイルスに感染することが多い子供が、新型に対して重症化しにくいことも、交差免疫で説明できるのではないか」と指摘する。
コロナウイルスに詳しい水谷哲也・東京農工大教授(ウイルス学)は「交差反応があったとしても、新型コロナウイルスへの防御力がどれだけあるかは分からないので、さらに研究が必要だ」と話している。