【北京時事】香港国家安全維持法の施行に米国が態度を硬化させる中、米市場に上場する中国企業が香港市場に重複上場する動きが加速している。米市場からの締め出しを狙うトランプ政権の強硬姿勢が中国企業の「回帰」を後押しし、金融センターとしての香港の地盤沈下を食い止めている形だ。
米国は米上場の中国企業が会計検査や情報開示に消極的なことを問題視しており、監査や検査を拒否した企業の上場廃止を含む規制強化に踏み出した。新興株式市場を運営するナスダックは、不正会計が発覚した中国カフェチェーン大手ラッキンコーヒーに対し、5月以降2度にわたり上場廃止を通告した。
こうした中、先月にはナスダックに上場する中国インターネットサービス大手の網易、ネット通販大手の京東集団(JDドットコム)が相次いで香港証券取引所に重複上場。中国経済紙によると、検索サイト大手の百度(バイドゥ)などの名前も取り沙汰されている。米市場から締め出された場合に備えたいとの思惑がうかがえる。
受け入れ側となる香港も対策を進めてきた。香港証取は中国電子商取引最大手の阿里巴巴(アリババ)集団の上場を取り逃がした反省から、上場基準を緩和。いったんは上場先にニューヨーク証取を選んだアリババも昨年11月、香港に重複上場した。
香港市場では、国家安全維持法が施行された6月30日からの上昇率が約4%に達した。相次ぐ重複上場の効果もあり、足元では市場に混乱は見られない。ただ米国の強硬姿勢に対する警戒感は根強く、先行きの不透明感は拭えない。