北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の妹である金与正(キム・ヨジョン)党第1副部長が今月2日に開かれた党中央委員会第7期第14回政治局拡大会議に、政治局委員として参加したとの情報が浮上した。
北朝鮮の内部情報筋が韓国デイリーNKに伝えたところによると、「2日に開かれた政治局拡大会議に、金与正同志は政治局委員として参加した。正確にいつ、政治局委員になったかはわからないが、会議の参加者の大部分は、このとき初めて金与正同志が政治局委員になっていたことを知った」という。
今回の拡大会議では組織問題(人事)は扱われておらず、金与正氏は会議参加時にはすでに政治局委員となっていたという意味だ。情報筋によれば、金与正氏が座った席の机に置かれたネームプレートには「党政治局委員 金与正同志」と書かれていたという。
仮に金与正氏の政治局委員選出が事実ならば、女性としては金正日総書記の妹・金慶喜(キム・ギョンヒ)元党書記に続いて2例目となる。
金与正氏は2017年10月に政治局委員候補に選出されたが、ベトナム・ハノイでの米朝首脳会談(2019年2月)が決裂した後に開かれた党総会(同4月)でいったん解任され、今年4月11日の党政治局会議で政治局委員候補に再選出された。政治局委員選出が事実ならば、委員候補復帰から3カ月も経たずスピード出世したことになる。
「幹部たちの間には、(韓国に対する)対敵活動の雰囲気を盛り上げ、敵を容赦なく叩いて心胆を寒からしめたことで、候補委員から委員に補選されたのだろうという噂と評価がある」(情報筋)
10日にも「年内の首脳会談はない」とする対米談話を出すなど、北朝鮮政治の前面に出てきた金与正氏だが、北朝鮮国内でも、彼女を畏怖する声が徐々に出て来ているようだ。
米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)によると、北朝鮮北部・両江道(リャンガンド)の中朝国境地帯では3月、金与正氏の指示により、秘密警察の国家保衛省が地元幹部らの不正行為に対する検閲を行ったという。
こうした検閲も、通常ならば、保衛省の検閲担当者にワイロを渡すことで調査に手心を加えてもらえる。しかし今回はそれすらもできず、地元幹部らは震え上ったという。RFAによると、現地情報筋はこうした動きに対し「最近の法的・行政的な執行過程を見ると、最高尊厳(金正恩氏)の指示や方針よりも、金与正第1副部長の指示や方針の方がより過激で徹底的に執行されるように思える」と語ったという。
ただし、金与正氏が着々と実績を築き、政治的な権威を高めてはいるものの、北朝鮮の幹部たちが本当に恐れているのはやはり金正恩氏だ。高官らの公開処刑を繰り返しながら国民に植え付けた「恐怖」なくして、金氏一族の独裁は維持できない。
あるいは必要とあらば、金与正氏もまた、兄のような残忍な行為に手を染めることができるのだろうか。