• ECB、PEPPは全額活用へ-支援必要な国の国債購入に重点
  • 復興基金は「早急に合意する」ことが重要-ラガルド総裁

欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は16日、新型コロナウイルスによる「高い不確実性」と経済のスラック(たるみ)を警告した。成長とインフレを回復させるために必要なあらゆる措置を取り続けると表明し、金融政策に制約はないと述べた。

  総裁は政策決定後の記者会見で語った。ECBはパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の規模を1兆3500億ユーロ(約160兆円)に据え置き、中銀預金金利をマイナス0.5%で維持した。

  ラガルド総裁は「実際および予想される雇用や所得の喪失と、パンデミックの展開と景気見通しを巡る異例に高い不確実性が引き続き、個人消費と企業投資の重しとなっている」と指摘した上で、「十分な金融緩和が依然として必要だ」と述べた。

  見通しへのリスクは引き続き「下振れの方向だ」とし、「政策委員会は、この極めて厳しい時期に全てのユーロ圏市民を支えるため、責務の範囲内で必要なあらゆる措置を取ることに引き続き完全にコミットしている」と言明した。

  PEPPについて、ECBは現在のところ全額を使用するつもりだと発言。全額は必要ないかもしれないとシュナーベル理事が最近述べたのとは対照的だった。

  総裁はさらに、イタリアなどパンデミックに際して最も支援を必要としている国の国債購入に重点を置くことを継続するとも表明。各国の経済規模に応じて定められたECBへの出資比率(キャピタルキー)に基づく購入規定への収れんは「ある段階では起こるだろう」が、そのために政策効果が損なわれることは容認しないとして、PEPPの柔軟性を強調した。

  欧州の大半で新型コロナ感染が抑制され経済が再開されつつある今、当局は回復が持続するかどうかを見極める時間がある。

  しかし、見通しは依然として脆弱(ぜいじゃく)で、欧州連合(EU)首脳らが17日の会議で復興基金について合意できるかに多くがかかっている。

  ラガルド総裁は、首脳らが「早急に合意する」ことが重要だと述べた。首脳らは「大きな希望と期待を背負っている。成功を望む」とし、「大多数の首脳が時間を無駄にできないことを理解していると思う」と付け加えた。

  EUの欧州委員会は先週、ユーロ圏経済が今年約9%縮小するとの見通しを示すとともに、イタリアやスペインなど新型コロナの打撃が大きい国とドイツなど北部の諸国との乖離(かいり)について警鐘を鳴らした。

  ラガルド総裁も同様の見解を示し、「新型コロナの前から既にメンバー国間である程度の乖離はあった。これが持続するリスクがあるが、回避すべきものだ。われわれが復興基金を歓迎するのはこのためだ」と語った。

原題:ECB’s Lagarde Says Heightened Uncertainty Means Stimulus KeyLagarde Says ECB Won’t Be Constrained in Fight Against Virus
Lagarde: Won’t Let Capital Key Convergence Impair ECB Policy(抜粋)