- 1200ドルの個人直接給付や免責条項も盛り込む
- 政府と民主党が交渉開始、28日も協議継続する見通し
米上院共和党は27日、新型コロナウイルスで打撃を負った経済を支えるための1兆ドル(約105兆円)規模の包括的経済対策案を公表した。失業給付の現行の上乗せ分を減額するほか、大半の個人への1200ドルの直接給付や、新型コロナを巡り企業や学校などを訴訟から守る免責条項が盛り込まれた。
同案を巡っては議会共和党とトランプ政権が交渉を続けていた。しかし交渉では経済対策の範囲と規模を巡る党内の溝は埋まらなかった。
州の失業保険に上乗せして支給している連邦政府からの給付金は現行の週600ドルから200ドルに減額するとした。
マコネル共和党上院院内総務は上院本会議場で、「われわれは片方の足を新型コロナ感染の拡大に、もう一方の足を経済の回復に置いている」とした上で、「米国民はさらなる支援を必要としている。この支援は包括的なものにする必要があり、また現在の岐路に立つ状況に念入りに合わせなければならない」と述べた。
同案を基に、3兆5000億ドル規模の経済対策案を提示している民主党との交渉が始まった。ペロシ下院議長とシューマー民主党上院院内総務は27日夕、下院議長オフィスで、ムニューシン財務長官とメドウズ大統領首席補佐官と協議した。
メドウズ氏は協議終了後、「あす再び話し合う。非常に生産的で良い協議ができた」と語った。
一方、ペロシ氏は共和党案を「哀れなほど」小出しのアプローチであり、国の必要性に十分対応していないと批判。「そうは言っても、われわれは共通点を見いだせるかどうか検討するつもりだ。しかしまだその段階に至っていない」と語った。
連邦政府の失業給付は近く失効期限を迎える。また、前回の包括的経済対策の他の支援も資金が底を突きかけており、議会は包括的経済案の通過を急ぐ必要がある。2週間後には夏季休会入りする予定であり、9月の議会再開後も11月の大統領選が近づく中で密な日程が続く見通し。
グラント・ソーントンのチーフエコノミスト、ダイアン・スウォンク氏は、議会の景気対策は実際の経済の動きに追いついていないと指摘。「新型コロナは米経済に長期にわたり影を落とすと私は懸念しており、議会が提案している支援策は規模があまりにも小さく、遅過ぎる」とし、「今後、破産や倒産が増えることにより、再建するための基盤がはるかに小さく、ばらばらになり得る」と説明した。
交渉難航か
共和党内の溝が今後、マコネル氏による交渉を難しくする見通しだ。クルーズ上院議員は記者団に、「規模を大幅に拡大することへの抵抗が党内にある」とし、「現状では複数の共和党議員がこの法案に反対し、強い懸念を表すだろう」と語った。
またホワイトハウスと上院共和党の間にも見解の相違がある。メドウズ氏は、議会がはるかに小さい規模の学校支援と失業給付の案をまず成立させ、その後、より大きな規模の案の交渉を8月まで続けることを提案していた。これに対し、マコネル氏は法案は包括的でなければならないとして、メドウズ氏の案を否定した。
今後の交渉では、民主党が求めている州支援と、共和党案に盛り込まれた企業や学校などを訴訟から守る免責条項が対立点となる公算が大きい。
原題:GOP Rolls Out $1 Trillion Stimulus to Start Talks With Democrats(抜粋)