いわゆる徴用工問題で日本企業の資産売却の動きを伝える4日付の韓国大手紙(共同)
いわゆる徴用工問題で日本企業の資産売却の動きを伝える4日付の韓国大手紙(共同)

 【ソウル=名村隆寛】いわゆる徴用工訴訟で韓国の裁判所が出した新日鉄住金(現・日本製鉄)への資産差し押さえ命令の「公示送達」の効力が4日に発生し、韓国内の日本製鉄の資産の現金化(売却)手続きが可能となったことで、日韓関係は深刻な局面を迎えた。貿易、安全保障の分野でも、韓国側に日本との関係改善を図ろうとする兆しは見えない。

 韓国側は現金化に関して傍観の構えだ。韓国外務省報道官は4日の定例会見で「現金化の手続きは司法手続きの一部であり、政府次元で言及することではない」と述べ、司法判断に介入しない姿勢を示した。

 それでも、韓国政府は日本製鉄の資産が現金化された場合に、日本政府がどのような「報復措置」に出るかを懸念している。

 韓国外務省報道官は「(日本の)具体的な措置が出たときに実際の対応に出る。状況を鋭意注視している」とした。韓国政府の対応に関し、韓国紙、京郷新聞は「相応の措置で対応するしかない」との外交関係者の話を挙げ、金融制裁が発動されたら韓国側も金融制裁で対抗するなど「日本と同水準の対抗措置」を検討中だと伝えた。

 日韓の火だねは他にもある。韓国政府は日本政府による昨年7月の対韓輸出管理厳格化措置を不当だとし、同9月に世界貿易機関(WTO)に提訴。今年6月には一時中断していた紛争解決手続きを再開した。

 この問題についても、韓国外務省報道官は4日、「(安全保障上の懸念など)日本が提起した疑問は解消済みだ」と自国の正当性を強調した。

 また、昨年8月に破棄の決定を発表しその後、維持決定された日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)は今月下旬に終了通告期限を迎える。

 同省報道官は、GSOMIAを「いつでも終了させることは可能」とし、維持は「日本の輸出規制措置の撤回の動向次第だ」との認識を示した。

 日本企業の資産現金化をめぐる日本の反発を尻目に、韓国側は逆に日本に圧力をかけ始めている。