【ワシントン時事】米大統領選の民主党副大統領候補に決まった黒人女性のハリス上院議員。訴える経済政策は中道派バイデン前副大統領に近い。だが、同党が重視する医療保険改革で急進左派が提唱する「国民皆保険」を一時支持し、発言がぶれたことも。こだわりのなさを「無難」と評価する見方がある一方、戦後最悪の経済危機を克服する手腕は未知数だ。
企業増税、規制強化、格差是正―。民主党正副大統領の候補指名を固めたバイデン、ハリス両氏は、これら主要な論点でトランプ政権との違いを鮮明に打ち出す構え。中国に対する制裁関税にも否定的だ。財政拡張を伴う「大きな政府」を志向しつつ、新型コロナウイルス流行下で経済の活力をそがない慎重な政策運営が求められる。
「その瞬間に妥当かどうかが大事」。ハリス氏は自らの政治信条の柔軟性をアピールする。今年の大統領予備選に出馬した際、路線対立の激しい民主党内の融和を優先。財源問題を棚上げして国民皆保険に言及し、党内左派への配慮をのぞかせた。環太平洋連携協定(TPP)や北米自由貿易協定(NAFTA)にも反対した。
バイデン、ハリス両氏の「中道寄り」コンビは、米経済界で「トランプ大統領と真逆で予測可能」(商社幹部)と安心感を誘ったもよう。ただ、分断が深まる米国ではリベラルな左派の主張をどう取り込むかも焦点で、市場の関心は「バイデン政権」の経済閣僚の顔ぶれに移る。民主党内には「反ビジネス」色の濃いウォーレン上院議員を財務長官候補に推す声もあるといい、大増税で民間の自由な経済活動が損なわれるとの懸念が台頭している。