【ロンドン時事】世界各国で4~6月期のGDP(国内総生産)の発表が相次ぐ中、欧米の急激な景気悪化が鮮明となっている。各政府は大規模な経済対策でてこ入れを模索しているが、新型コロナウイルスによる都市封鎖(ロックダウン)がもたらした傷跡は深く、不況の長期化に懸念が強まっている。
「試練の時を迎えている。何十万もの人々が既に職を失い、さらに多くの人々が今後数カ月でそうなるだろう」。スナク英財務相は12日、経済的な衝撃の大きさをこう表現した。同日公表された英GDPは前期比年率で59.8%減。前例のない大幅な落ち込みとなった。
記録的な悪化は米国やユーロ圏主要国でも同じ。いち早く経済活動を再開してV字回復を果たした中国を除き、これから統計を発表する国を含む大半が大幅なマイナス成長となる見通しだ。
景気下支えのための対策も本格化している。欧州連合(EU)は7月、7500億ユーロ(約95兆円)規模の経済再建策で合意。米国では追加の対策をめぐりトランプ政権と野党・民主党の協議が続く。米連邦準備制度理事会(FRB)も異例の金融緩和の長期化を示唆している。
経済活動の再開やこれらの景気刺激策を背景に、各国とも7~9月期には大幅な持ち直しが予想されている。問題はその後だ。調査会社オックスフォード・エコノミクスは、感染第2波がなかったとしても「経済成長が著しく鈍化する」と分析し、不況が長引く可能性を指摘する。
日本では17日にGDP速報値が発表される。市場予想は年率27.2%減(ロイター通信調べ)と急激な悪化が見込まれるが、それでも先進7カ国(G7)では最も小幅な落ち込みにとどまりそうだ。
◇先進国の4~6月期成長率
前期比 年率換算
日本 未発表
米国 ▲9.5 ▲32.9
カナダ 未発表
英国 ▲20.4 ▲59.8
ドイツ ▲10.1 ▲34.7
フランス ▲13.8 ▲44.8
イタリア ▲12.4 ▲41.0
(ユーロ圏)▲12.1 ▲40.3
(注)単位%。▲はマイナス。年率換算は同じ成長ペースが1年続くと仮定した数値。いずれも各国・地域発表の速報値。