ロシアの野党勢力の指導者のナワリヌイ氏が治療を受けているドイツの病院が毒物が使われた可能性があるとしていることについて、ヨーロッパのメディアは、おととしイギリスでロシアの元スパイが襲われた暗殺未遂事件で使われた神経剤との類似性を指摘しています。
ロシアのプーチン政権を鋭く批判してきたことで知られる野党勢力の指導者ナワリヌイ氏は、8月20日、旅客機で移動中に体調の異変を訴え、ドイツの病院で治療を受けていますが、病院側は24日、体内から毒物が使われた可能性を示す痕跡が確認されたと、明らかにしました。病院は、体内の酵素の働きを妨げるコリンエステラーゼ阻害剤に分類される物質による中毒症状が確認されたとしていますが、具体的な物質は特定していません。
これについてドイツの公共放送ZDFは、おととしイギリスでロシアの元スパイ、セルゲイ・スクリパル氏とその娘が襲われた暗殺未遂事件で使われた神経剤「ノビチョク」も同じコリンエステラーゼ阻害剤に分類されるとして、類似性を指摘しています。また、イギリスの公共放送BBCは、ナワリヌイ氏に投与されている解毒剤がイギリスでスクリパル氏の治療の際に使われたものと同じだと、伝えています。ナワリヌイ氏が治療を受けているドイツの病院が、コリンエステラーゼ阻害剤に分類される物質による中毒症状が確認されたとしていることについて、ナワリヌイ氏をはじめに治療したロシアの病院の責任者は、地元メディアに対して「この物質の有無を含めて幅広く検査したが、結果は陰性だった」としています。
また、ロシア大統領府のペスコフ報道官は25日「現時点で1つの説を語るのは誤りだ」と述べ、毒物が使われたかどうかを特定するには、さらなる検査が必要だという見方を示しました。そのうえでEU=ヨーロッパ連合がロシアに対して真相究明に向けた調査を行うよう求めていることについても、「まずは物質が特定されるべきで、そのあとに調査をする根拠が出てくる。いま大事なことはナワリヌイ氏の回復を支援することだ」と述べ、現時点で調査を始めることに否定的な見解を示しました。