トランプ米大統領(右)を「いかさま師」と批判する政治資金団体「リンカーン・プロジェクト」のビデオ広告の一場面=同団体のウェブサイト掲載の動画より
トランプ米大統領(右)を「いかさま師」と批判する政治資金団体「リンカーン・プロジェクト」のビデオ広告の一場面=同団体のウェブサイト掲載の動画より

 【ワシントン時事】米共和党がトランプ大統領支持を前面に押し出した選挙戦を進める中、同調を拒否する旧来の党員や支持者らによる「反トランプ運動」も活発化している。同党の政治戦略家らは政治資金団体「リンカーン・プロジェクト」を立ち上げて批判を展開、団体のメール登録者は50万人を突破した。トランプ氏は離反ののろしに神経をとがらせており、選対本部長を交代させるなどてこ入れを図っている。

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 「一言で表すと『災い』だ」。リンカーン・プロジェクト創設者の一人、政治評論家リック・ウィルソン氏はトランプ政権を酷評した。ブッシュ(父)元大統領の選対本部に勤めた経験もある政治戦略家で、根っからの共和党員。「トランプ氏は米国と共和党にとって重大な脅威だ」と断じる。昨年12月、危機感を共有する共和党員の知人らとリンカーン・プロジェクトを設立した。

 団体の名称は、南北戦争を戦い、米国を分裂から救ったリンカーン元大統領にちなむ。インターネット交流サイト(SNS)に反トランプのビデオ広告やメッセージを投稿。トランプ氏側近のケリアン・コンウェー大統領顧問の夫ジョージ・コンウェー氏が同団体で中心的役割を果たし、妻と正反対の立場で政治活動を行っていると注目を集めたこともある。

 同団体は、5月には「米国の服喪」と題したビデオ広告で、政権の新型コロナウイルス対策の失敗を糾弾した。共和党大会期間中の今週は、約400万ドル(約4億2000万円)を投じ、フロリダやオハイオなどの激戦州で政権批判のテレビ広告を流している。

 ウィルソン氏は「トランプ氏は共和党の伝統的価値観を無視し、党を自身を中心とする狂信的教団に変えてしまった」と指摘。再選を許せば新型コロナ対策や経済、外交政策で失敗を繰り返す一方、政治の私物化や腐敗が進み、「米国と世界にさらなる災厄をもたらす」と警告する。

 5月には共和党員によるもう一つの反トランプ政治団体「トランプに反対する共和党有権者」が設立された。報道によると、現政権下で国土安全保障省首席補佐官を務めたマイルズ・テイラー氏も今月、現役の政府当局者や元当局者による反トランプ団体「高潔さと刷新のための共和党政治連合」を創設。11月の大統領選本選を前に「トランプ離れ」の裾野が広がっている。