ドイツで治療を受けているロシアの反体制指導者、アレクセイ・ナワリヌイ氏(44)氏についてドイツ政府は2日、使われた毒は神経剤「ノビチョク」で「疑いのない証拠」が得られたと明らかにした。ロイター通信は「ザイベルト報道官は、ドイツの軍研究所で実施されたナワリヌイ氏の血液サンプルの検査でノビチョク使用の証拠が得られた」と説明。「ドイツ政府は欧州連合(EU)加盟国のほか、北大西洋条約機構(NATO)加盟国にこの結果を報告する」と表明した。メルケル首相は「ナワリヌイ氏がロシア国内で神経剤による攻撃の被害者になったことに衝撃を覚える。ドイツ政府はこの事件を強く非難する」としている。犯罪性に疑問の余地はない。ナワリヌイ氏は何者かによって毒を盛られたのである。プーチン体制にまたひとつ西側陣営が許容できない“汚点”加わった。
メルケル首相の反応についてロイターは、「ロシアの有力な反体制派指導者を狙った毒殺未遂に関する情報に動揺している」とした上で、「ナワリヌイ氏はノビチョク系の化学神経剤による攻撃の犠牲となった。この毒物は検査で明確に特定できる」と述べたと伝えている。「ノビチョク」はそもそもどんな薬物なのか。記事によると「1970ー80年代に旧ソ連軍が開発した神経剤で、コリンエステラーゼ阻害剤の一種。18年に英国で起きたロシア元情報機関幹部と娘の襲撃事件でも使われた」とある。2018年3月、英国政府はソールズベリーにおいて、何者かがロシア軍の元部幹部だったセルゲイ・スクリパリ氏と娘のユリア氏暗殺を狙って、ノビチョクが使用されたと発表している。この時メイ首相は議会で「ロシア国家による我が国に対する直接的行動か、あるいはロシア政府が潜在的に破局的な損害を与える得る神経剤の管理を喪失し、第三者が入手することを許した」(ウキペディア)と報告している。
今回は場所こそロシア国内だったが、まったく同じことが繰り返されている。メルケル氏首相の非難に対してロシア外務省は2日、「ナワリヌイ氏がノビチョク系の毒物を盛られたとするドイツ政府の主張には根拠がなく、ドイツがナワリヌイ氏に関する情報を公開したことは遺憾だ」(ロイター)と表明した。どちらの言い分が正しいのか、国際社会による解明を待つしかないが、真実が究明されることはないだろう。憲法を改正し再選に道を開いたプーチン大統領だが、国内では反プーチン派が勢いを増しつつある。ナワリヌイ氏はプーチン支持者にとって目の上のタンコブであったことは間違いない。情況証拠、殺害の動機は明確である。証拠も検出された。毒を盛られた場所もはっきりしている。それでも真相は藪の中。プーチン大統領の“闇”に誰がメスを入れるのか。歴史の審判を待つしかないとすれば、ロシア人にも救いがない気がする。
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