【シリコンバレー時事】米国でトランプ大統領を礼賛する極右陰謀論「Qアノン」が勢力を増している。インターネットの匿名掲示板を発祥とする根拠のない主張だが、ソーシャルメディアで増幅。左派政治家やエスタブリッシュメント(既得権益層)を敵視するトランプ氏の言動と共鳴し、政界でも存在感を高めており、11月の大統領選に影響を与えそうだ。

「Qアノン」陰謀論者が予備選勝利 「未来の共和党のスター」とトランプ氏称賛

「おめでとう。未来の共和党のスターだ」。トランプ氏は、南部ジョージア州で8月に行われた下院選の共和党予備選で勝利したQアノン信奉者の実業家マージョリー・グリーン氏に、ツイッターで祝辞を送り、こう持ち上げた。

Qアノンは、民主党の政治家ら社会のエリート層が児童買春や悪魔崇拝の結社を組織しており、トランプ氏がこれとひそかに闘っているとする陰謀論と、こうした主張を支持・拡散する運動の総称だ。グリーン氏はトランプ氏に「あなたが私を立候補に奮い立たせてくれた」と返信。Qアノンが政界の主流に入り込み始めたことを印象付けた。

勢力拡大のきっかけとなったのが、新型コロナウイルスの流行だ。外出規制が広がった3月に、ツイッターやフェイスブック(FB)などでQアノン関連のやりとりが急増。8月にはQアノンの主張が国際援助団体を思わせる「セーブ・ザ・チルドレン」のハッシュタグ(検索用の目印)で拡散され、同団体が関係を否定する声明を出した。

ツイッターやFBは8月までに、Qアノン関連アカウントを削除したり、表示されにくくしたりする対策に乗り出した。FBが削除したグループの一つは20万人近いメンバーを抱えていたという。

トランプ氏は信奉者に配慮を見せる。8月19日には記者会見でQアノンについて問われ、「私がとても好かれているということしか知らない」と強調。陰謀論には立ち入らず、「彼らは国を愛している人たちだ」とたたえた。

英シンクタンクの戦略対話研究所は7月に公表した報告書で、大統領選に向けてQアノンが偽情報を拡散する手段になる可能性を指摘。「陰謀論への支持の急拡大を深刻に受け止めるべきだ」と警鐘を鳴らしている。