国民民主党を支援してきた連合傘下の産業別労働組合(6産別)と組織内議員9人が、綱領への「原発ゼロ」記載などを理由に、立憲民主党との合流新党への不参加を決めた。連合の神津里季生(りきお)会長は合流実現へ積極介入してきたが、性急なことの運びが裏目に出た。連合の「分裂」を危惧する声も出始めている。

■「責任を棚に上げ八つ当たり」

6産別が合流新党不参加を決めた1日、神津氏は臨時の記者会見で怒りをぶちまけた。

「この混乱の状況を生んだのは、国民の玉木雄一郎代表の言動に他ならない」

神津氏は玉木氏の「分党」表明が産別離反の原因だと批判。さらに「玉木新党なるものに組織内議員が引き寄せられるようなことが仮にあれば、その政党を支援する考え方には到底行きつかない」とまで言い切った。

しかし、神津氏の高圧的な言い分は「自分の責任を棚に上げて八つ当たり」(国民幹部)などと、逆に連合内外からの批判を招いた。

■「希望の党」…汚名返上狙ったが

神津氏は平成29年衆院選で旧「希望の党」結党を後押ししたが、結果的に野党は分裂し、連合の支援先も割れた。このため今回の合流協議には「汚名返上」とばかりに積極介入。新型コロナウイルス禍を受けた「共有する理念」の策定など、相原康伸事務局長とともに仲立ちに奔走した。

立民、国民の合流推進派幹部と歩調をあわせ、慎重派の玉木氏の外堀を埋めるべく動いたが、厳しい結果となった。「原発ゼロ」綱領は、電力など関連産業を抱える6産別には受け入れられず、組織内議員の一人は「綱領は連合の日程にあわせ、密室協議で一方的に決められた」と憤慨した。

反発を受け、神津氏らは「共有する理念」では原発ゼロのトーンを弱め、連合が合流新党を「総体として支援」する方針を決めるなどして産別の引き留めを図ったが、後の祭りだった。組織内議員の中には、民間労組を新党から排除するため、立民側が意図的に「原発ゼロ」を盛り込んだと疑う向きすらある

■「また裂き」固定化に近づく?

不参加を決めた6産別の議員は、玉木氏らの立ち上げる新「国民民主党」に参加するかどうかを7日に表明する見込み。神津氏の顔を立てるため、当面は無所属で活動すべきだとの意見もあり、議員の一人は「全員が玉木新党なら、その途端に連合崩壊だ」と語る。

一方で、立民を支援してきた日教組や自治労などは合流新党を支援する見通し。官公労と民間労組で支持政党が割れる「また裂き」は解消されず、逆に固定化へ近づいた。旧総評と旧同盟が合併し、連合が発足してから30年超。今回の騒動について、合流不参加を決めた国民幹部は「連合の終わりの始まりだ」と語る。(千葉倫之)