- 発言割り込み、個人攻撃-中核支持層ら歓迎も、多数は不快感表明
- 「熱くなり過ぎた」、トランプ陣営からもやり過ぎの声
9月29日の米大統領候補の討論会でトランプ大統領は、同氏のなりふり構わぬ挑発的なスタイルを前面に押し出したが、このスタイルが無党派や中道派の多くの有権者を遠ざけてしまった可能性がある。
この日の討論会は米国の大統領候補の討論として、過去最低の一つと評価された。
約90分間の討論会でトランプ氏は、民主党候補のバイデン前副大統領の発言を遮ったり個人攻撃をしたりと、自身の中核支持層を興奮させる戦略を踏襲した。こうした支持者らは一歩も譲ることなく相手を侮辱するトランプ氏のやり方を歓迎する。
トランプ氏とバイデン氏が非難の応酬、司会者もお手上げ-討論会 (2)
しかし世論調査は、中核支持層だけではトランプ氏が再選を果たせないことを示した。勝利するにはトランプ氏の1期目に幻滅している大卒者、郊外居住者、女性の有権者の少なくとも一部の支持が必要だ。
しかし、29日の討論会でこれが達成できたとは考えにくい。白人至上主義者を明確に否定することを拒否し、選挙結果が思い通りでない場合は受け入れないと示唆したのではなおさらだ。
大統領陣営からもトランプ氏はやり過ぎたとの声が上がった。トランプ氏のディベートコーチを務めた元ニュージャージー州知事のクリス・クリスティー氏は、「攻撃的になるのは正しかったが、熱くなり過ぎた」と述べた。「そのせいで輝きが失われた」と指摘した。
CNNのアンカーのダナ・バッシュ氏は討論会終了後のライブ放送で、「ひどいショー」だったと言うのに思わず放送禁止用語が口をついて出た。CBSニュースの視聴者調査によると、69%が「不快感を感じた」とし、19%は「悲しくなった」と討論会について語った。
トランプ氏の最大のミスは、白人至上主義団体に対する非難を躊躇(ちゅうちょ)したことだった。暴力的な白人至上主義団体であるプラウドボーイズに対して何と言うかとの司会クリス・ウォレス氏の質問に対し、トランプ氏は「下がって待機」すべきだと答えた。その上で「これは右派の問題ではなく、左派の問題だ」と述べた。
ネオナチ組織に「下がって待機せよ」、トランプ大統領が討論中に指示
これについて、上院共和党で唯一の黒人であるティム・スコット議員(サウスカロライナ州)は、白人至上主義団体を非難しなかったことが「失言」に当たると指摘。「訂正すべきだと考える」と記者団に述べた。
共和党の世論調査専門家フランク・ルンツ氏が実施した態度を決めていない有権者のフォーカスグループインタビューで参加者らは、トランプ氏がディベートでは支配的だったと認めつつその戦術を拒絶した。過半数はトランプ氏を否定的に捉え、ペンシルベニア州のある女性は、トランプ氏が「薬物常用者」のように振る舞ったのでバイデン氏に投票しようと思うと述べた。
郊外居住の女性の動向を追跡する民主党ストラテジスト、ホイットニー・ミッチェル・ブレナン氏によると、女性たちはバイデン氏およびウォレス氏に対するトランプ氏の失礼な態度に気分を害したという。
原題:Trump’s Bare-Knuckle Night With Biden Risks Repelling Key Voters(抜粋)