首相官邸に入る菅義偉首相=2020年10月5日午前8時59分、竹内幹撮影

 菅義偉首相は5日、内閣記者会のインタビューで、科学者の代表機関「日本学術会議」から推薦された新会員候補6人を任命しなかった問題を巡り、6人が安全保障法制や「共謀罪」創設など、安倍晋三前政権の重要法案について批判的な立場だったことは「一切関係ない」と述べた。だが、6人の任命を拒否した理由については「個別の人事に関することはコメントを控える」と明言を避けた。

 首相は「学問の自由の侵害」と指摘されていることに対しては「学問の自由とは全く関係ない」と語気を強めて反論。「法に基づいて、内閣法制局にも確認の上で推薦者の中から首相として任命した」と法的に問題はないことを強調した。

 さらに、学術会議の会員は公務員の立場で、国の予算を年間約10億円投じているとした上で、学術会議内の推薦方法について「現在の会員が自分の後任を指名することも可能な仕組みだ」と指摘。「任命する責任は首相にあり、推薦された方をそのまま任命する前例を踏襲して良いのか考えてきた」と述べた。

 また、2001年の省庁再編時に学術会議の必要性を含めたあり方について「相当の議論が行われ、結果として総合的、俯瞰(ふかん)的な活動を求めることになった」とふり返り、「総合的、俯瞰的な活動を確保する観点から、今回の任命についても判断した」と述べた。

 1983年の参院文教委員会で、中曽根康弘首相(当時)が「実態は各学会が推薦権を握っている。政府の行為は形式的行為」などと答弁していたことについては「過去の国会答弁は承知しているが、当時の学会の推薦に基づく方式から、現在は個々の会員の指名に基づく方式に変わっている。それぞれの時代の制度の中で、法律に基づいて任命している考え方は変わっていない」とした。【佐野格】

日本学術会議の人事に関する首相発言骨子

・6人の政府提出法案に対する立場と任命は関係ない
・「学問の自由」とは無関係
・内閣法制局に確認の上で法に基づき任命
・年間約10億円の予算を使い、会員は公務員
・総合的、俯瞰的活動の確保のため判断
・過去の国会答弁時とは推薦方式が異なる