【ソウル=桜井紀雄】日本で6日開かれた日米豪印4カ国外相会合の動向を当事国並みに気にかけてきたのが韓国だ。文在寅(ムン・ジェイン)政権は「経済は中国、安全保障は米国」と米中両にらみの立場を保ち、日米豪印の対中牽制(けんせい)の枠組みとは距離を置いてきた。だが、ポンペオ米国務長官が急遽、訪韓を見送ったことが伝わると、韓国の外交的孤立を懸念する声が韓国内で一気に高まった。
韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相は9月下旬、日米豪印の枠組みに韓国も加わることについて「他国の利益を即排除するいかなるものも良いアイデアではない」と否定的な見解を示した。「他国」とはほかでもない中国を指す。文政権の慎重姿勢の背景には、経済的な依存関係だけでなく、中国の後押し抜きには頓挫した北朝鮮との融和策の再推進は難しいとの認識がある。
韓国は、文大統領が9月の国連総会演説で休戦状態にある朝鮮戦争(1950~53年)の「終戦宣言」実現に向けた国際社会の協力を訴えたほか、政府高官が相次ぎ訪米。今月7~8日に訪韓予定だったポンペオ氏と康氏との会談で、11月の米大統領選までに停滞した米朝協議の再開へ道筋をつけることに望みを託してきた。
だが、トランプ大統領の新型コロナウイルス感染を受けてポンペオ氏は、訪日後に予定していたモンゴルと韓国への訪問延期を決めた。韓国紙、朝鮮日報は6日付の社説で「米外交の優先順位で韓国が後回しにされる『コリア・パッシング(韓国素通り)』の現状がここにある」と懸念を伝えた。