インタビューに応じるポンペオ米国務長官(6日、東京都港区の米大使公邸)
来日中のポンペオ米国務長官は6日、日本経済新聞とのインタビューで、日米とオーストラリア、インドの外交協力を他国にも広げ、将来、インド太平洋に多国間の安全保障の枠組みを構築することが望ましいとの考えを表明した。中国をにらみ、価値と戦略を共有する国々で結束を強めるための構想だ。
ポンペオ長官は6日、菅義偉首相と首相官邸で会談し、引き続き日米同盟の強化に努めていくことで一致した。都内で開かれた日米豪印の外相会談にも出席し、インド太平洋構想を進めるとともに、今後、外相会談を定例化することで合意した。
これに関連して、ポンペオ長官はインタビューで「4カ国の協力を制度化すれば、本物の安全保障の枠組みづくりに入ることができる」と指摘。そうした努力を通じ、「中国共産党の挑戦に対抗する安全保障網」を築いていく考えを明らかにした。
米欧の北大西洋条約機構(NATO)がある欧州とは異なり、インド太平洋には多国間の安全保障協力の枠組みがない。軍事、経済両面で急速に影響力を強める中国に向き合い、安定を保っていくには、多国間の協力網が欠かせないとの認識にもとづく提案だ。
新たな安全保障枠組みの役割については、経済や法の秩序、知的財産権の保護など幅広い分野も協力の対象になると説明。民主主義国が結束し、「強権国家群」に対抗する基盤に育てるべきだとの考えを強調した。
トランプ政権は「クリーンネットワーク」計画と称し、通信網やアプリ、クラウドサービスといった5つの重要分野から、信頼性が薄いとみなした中国企業の排除を進めている。
こうした中国のデカップリング(切り離し)路線に関しては「米国対中国という構図の話ではない。個人のデータが中国共産党の手中に入らないようにするための政策だ」と力説。日本などの同盟国や友好国も、米政権の路線に積極的に参加するよう促した。
新型コロナウイルスの感染が広がるなか、中国が南シナ海や日本の尖閣諸島、インド国境付近などで強硬な振る舞いを繰り返していることを批判。米国は「緊張を和らげるため、あらゆることをする」と約束した。
そのうえで「融和策は正解にはならないとの認識に至った」とも述べた。中国への外交圧力を強めるとともに、インド太平洋への軍事的な関与を維持し、中国をけん制していく方針を改めて示した。
ポンペオ長官は新型コロナウイルスに感染したトランプ大統領の健康状態について「日本に出発する直前、大統領と約1時間半にわたって話した。話題はあらゆるテーマに及んだが、彼はとても元気な様子だった」と語り、米外交には支障は生じないとの立場を示した。そのうえで「大統領は常時、指示を出しており、私が来日し、菅首相に就任のお祝いを伝えられることを喜んでいた」と語った。
(聞き手は本社コメンテーター 秋田浩之)