- トランプ政権の制限案、アントのIPO計画にも影響か
- 米政権、中国決済プラットフォームが世界の主流になることを懸念
トランプ米政権は中国アリババグループの金融会社アント・グループおよびテンセント・ホールディングス(騰訊)に制限を課すことを検討している。両社の決済プラットフォームが米国の国家安全保障を脅かす懸念があるためだと、事情を知る関係者が明らかにした。中国のいら立ちを深める恐れがあるほか、アントが計画する新規株式公開(IPO)にも影響が及ぶ可能性がある。
両社の決済システムに制限を課すのかどうか、課すとすればどのような方法をとるのかを巡り、ここ数週間に米政府高官の間で議論が活発になっていると関係者は述べた。近く最終決定が下されることはないという。関係者はまだ具体化していない案だとして匿名を条件に語った。
関係者によると、米政府には中国のフィンテックプラットフォームが世界のデジタル決済を支配するようになるとの懸念がある。そうなれば、数億人の個人データや銀行データに中国当局がアクセスする道が開かれるという。この問題については9月30日に、政権幹部がホワイトハウス地下の危機管理室で議論したと関係者2人は述べた。
ただどのような仕組みにするかが解決されない限り、案を進めることは難しいだろうと当局者らは認める。法的に適切なアプローチを模索する中で、仕組み作りが難しいことが明らかになりつつあるという。
この案がトランプ大統領に提示された兆しはないと、関係者の2人は語った。当局者が中国に関して会議を開いた翌日に、大統領は新型コロナウイルス感染で具合が悪くなり、この案はそれ以降は政権幹部レベルで進展していないと関係者の1人は述べた。
アントは発表文で、米政権内の議論については何も関知していないとし、「弊社の事業は主に中国で展開しており、中国市場の成長見通しに期待感を募らせている」と説明。テンセントは今のところコメントに応じていない。
原題:U.S. Explores Restrictions on Ant Group, Tencent Payment Systems(抜粋)