資本主義はとうとう貧しいものを見捨てたようだ。ブルームバーグが先週末に配信した記事によると、「金持ち上位50人の合計資産は今年初めに比べ3390億ドル増え、約2兆ドルに達した」という。この額は下位50%(約1億6500万人)の資産額は合計2兆800億ドルに匹敵する。それだけではない。コロナ禍で金持ちの資産は増え続けているという。「米金持ちトップ上位1%の富裕層(約330万人)の合計純資産額34兆2000億ドル(約3620兆円)」とある。にわかには信じられない規模と額。貧困層が明日の糧に事欠く状況の中で、金持ちだけが焼け太っていく。おそらくこうした現象は米国だけではないだろう。自由主義という普遍的な価値観を共有する西側陣営に共通する傾向だろう。資本主義社会の絶対矛盾でもある。だが、残念なことに2人の次期大統領候補は、こうした状態の打開に向けたビジョンを示していない。

米国の人口は3億3000万人。その1%は330万人。その人たちの資産が下位の50%、つまり1億6500万人分の資産の17倍に達しているというのだ。考えただけで恐ろしい数字だ。強権主義に徹し、人間の尊厳を否定する社会主義体制。その代表格は中国だ。その国を批判し市場経済をベースに自由主義を謳歌し、ソ連を解体に追い込んだ米国。その国で起こっていることが超絶なる資産格差の拡大である。自由と人権が尊重されているとはいえ、その社会は想像を絶する巨大な格差の上に成り立っている。ブルームバーグが算出しているビリオネア指数によれば、「金持ち上位50人の合計資産は今年初めに比べ3390億ドル増え、2兆ドルに達した」という。下位50%の総資産に匹敵する。2兆ドルを50人で割ればいくらになるのか、貧困層に属する筆者としては計算する気にもなれない。世界はいま異常を異常とも思わなくなっているような気がする。

国連のデータによると19年現在、極端な飢えに苦しむ人は世界で1億3500万人。16年からの4年間で70%近く増えた。「十分に食べられない人」では、19年時点でアフリカ大陸を中心に8億2100万人に上る。世界人口のほぼ9人に1人だという。時事通信が配信した「WFP、『飢餓のパンデミック」懸念 紛争・気候変動、コロナ追い打ち―ノーベル賞』と題された記事に出ている。W F P(世界食糧計画)は今年のノーベル平和賞の受賞団体だ。紛争や気候変動の影響で飢餓に直面する人々の数は再び増加傾向を示している。ビーズリー事務局長によると「新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)がこれに追い打ちを掛けた」という。金持ちはコロナ禍で資産を激増させ、貧困層では飢餓が広がっている。資本主義というより人類が直面している危機だが、これを打開する方策はあまりにも力不足だという気がする。