【ソウル時事】北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は10日未明に行った党創建75年の演説で、核・ミサイル開発を強化する強硬路線を改めて強調した。軍事パレードでは新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)や潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を公開し、軍事力を誇示。一方、正恩氏は新型コロナウイルス対策や水害による国内の厳しい経済的苦境を隠さず、「一致団結」を求めた。
正恩氏は演説で米国に直接触れず、トランプ大統領との良好な関係に配慮を示した形。ただ、11月の米大統領選で民主党のバイデン氏が勝利した場合、北朝鮮に対する融和姿勢が転換する可能性もある。「戦争抑止力」の強化や先制攻撃の可能性に言及するなど対米けん制は緩めなかった。
一方、正恩氏は国内経済では苦境を素直に吐露した。新型コロナや水害への対策での苦労を訴え、「予想できない挑戦と障害は手に負えないものだった」と時折声を詰まらせつつ、「人民に話したいのはありがとうの一言だけだ」と何度も感謝を強調した。
さらに「人民の大きな信頼を受けていながら、一度も恩返しができず面目ない」「私の努力と誠意が不足し、人民が生活の困難から抜け出せずにいる」と反省の弁も。朝鮮中央テレビの映像は参席者が涙を流す様子も映しており、人民の情に訴えることで、難局打破への一致団結を図る意図がうかがえる。