[ワシントン 16日 ロイター] – 米商務省が16日発表した9月の小売売上高は、前月比1.9%増と、市場予想の0.7%増を上回った。好調な経済活動を示す内容で第3・四半期を締めくくった。ただ政府の支援金が枯渇するほか、全米で新型コロナウイルス感染が急増する中で景気後退(リセッション)からの回復の道は岐路に立っている。
自動車や衣料、外食、娯楽が好調に伸びた。8月の小売売上高は改定なしの0.6%増だった。
9月の自動車・ガソリン・建設資材・外食を除くコア小売売上高は1.4%増。8月は当初発表の0.1%減から0.3%減に下方改定された。コア売上高は国内総生産(GDP)の個人消費の構成要素と密接に連動する。
FHNフィナンシャル(ニューヨーク)のチーフエコノミスト、クリス・ロウ氏は「所得水準が高い人は在宅勤務に切り替えることでコロナ禍に対応できているが、所得水準が低い人の多くは、感染のリスクに身をさらすか失業するかの選択を迫られている」と指摘。
PNCフィナンシャル(ピッツバーグ)のチーフエコノミスト、ガス・ファウチャー氏は「売上高の伸びは堅調だが、来年にかけて減速が予想される。失業が高止まりする中、議会が追加経済対策を承認しなければ、一段と大きく減速する」と述べた。
小売売上高は2月を上回る水準まで戻っている。新型コロナのパンデミック(世界的大流行)を受け、自動車や家具、電子製品など自宅での生活を豊かにするモノの需要が増えている。
失業保険受給者に対する上乗せ手当を中心に、財政刺激策が小売売上高を押し上げた。個人消費や経済活動全体は第3・四半期に過去最大の伸びを記録する見込み。
第3・四半期GDPの市場予想は最大で年率35.2%増。第2・四半期GDPは前期比31.4%減と、政府が統計を開始した1947年以来の大幅な落ち込みとなった。
ただ、政府の支援金はほぼ枯渇している。政権と議会は企業や失業者に対する新たな支援策でなお合意に至っていない。15日に発表された前週の新規失業保険申請件数は2カ月ぶりの高水準に達した。
新型コロナ感染の拡大は事業の制限につながり、パンデミック前の状態を下回っているレストランなどサービス業への支出が抑えられる可能性がある。
第4・四半期の成長率は10%増を上回る予想から、低いものでは2.5%増にまで切り下がっている。一部のエコノミストは歴史的に高い貯蓄率が、政府による金融面の支援がない中で個人消費を下支えする可能性があると考えている。
9月は自動車が3.6%増えた。8月は0.7%増だった。外食は2.1%増。8月の4.3%増から鈍化した。オンライン小売りは0.5%増、家具も0.5%増、衣料は11.0%増。スポーツ用品・娯楽・楽器・書籍は5.7%増えた。
一方、電子・家電は、これまでの増加傾向から1.6%減とマイナスに転じた。