Yawen Chen
[香港 19日 ロイター BREAKINGVIEWS] – 中国の第3・四半期の国内総生産(GDP)は前年同期比4.9%増と、市場予想をやや下回ったものの、失業や不良債権の増大を懸念する中国当局にとっては、心地の良い水準となった。
景気の回復を背景に、中国人民銀行(中央銀行)は金融緩和に軽くブレーキをかける可能性をすでに示唆しており、今回の統計を受けて、そうした動きが加速することも考えられる。
確かに、最近の好調な経済指標が、今後も続くと楽観することは可能だ。鉱工業生産など、9月単月の指標は予想を上回っており、融資や起債も記録的な高水準に達している。
低迷していた小売売上高も、前年比3.3%増と、市場予想を上回った。消費の回復を背景に輸入は13%急増。国内旅行も再開し、映画館に観客が戻った。景気回復のすそ野は着実に広がっているように見える。
人民銀行は先週、経済見通しが改善すれば、政策の正常化を開始する可能性を示唆した。
だが、中国経済が景気刺激策に強く依存しているとの懸念は残る。鉱工業部門は政府主導で拡大し、与信の増加が不動産販売と建設ブームを支えている。国家金融・発展実験室によると、非金融機関の負債比率は上半期に20%ポイント上昇し、GDPの266%に達した。世界的な金融危機以降で最大の上昇だ。
こうした負債の拡大は、一部で不動産投機や株価の上昇を促す要因となっている。リフィニティブのデータによると、中国の信用取引残高は1兆5000億元(2240億ドル)と、2015年の中国株急落以降で最高を記録している。
だが、中国経済が一様に回復しているわけではない。1─9月の銀行融資は過去最高の2兆4000億ドルに達したが、地方の需要は干上がっている。調査会社ロジウム・グループによると、経済が停滞している遼寧省では、上半期の総与信量の伸びがマイナスとなった。債務の利払いに苦慮している省もある。
同時に、貧しい省が強く依存しているインフラ投資にも疲弊の兆しが出ており、省の財政が悪化している。大量の地方債が発行されているにもかかわらず、地方の財政支出は8月時点で前年比1.7%減少。前年同期は8.8%増加していた。
1-9月の民間固定資産投資も減少が続いた。景気刺激策を早期に打ち切れば、新型コロナウイルスの流行で悪化した不均衡が一段と拡大しかねない。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)