自民党の石破茂元幹事長(63)の突然の派閥会長辞任は、党内に波紋を広げた。「ポスト安倍」を目指し、安倍政権に耳の痛いことも言い続けてきた石破氏だが、9月の党総裁選で惨敗し、「対立路線」の限界が露呈。派閥維持のため自ら身を引いた格好だ。しかし、派閥の存在意義である総裁候補を失えば求心力が低下しかねず、「冷や飯食い」の結束を誇った石破派が他派閥の草刈り場となる懸念もある。【高橋恵子】
「総裁選の責任を取って会長を辞する。しかし水月会(石破派)は自民党にとっては、なくてはならない政策集団だ」。22日の派閥臨時総会で辞意を表明した石破氏は、今後も結束を維持していくよう集まった所属議員に求めた。
2015年総裁選が無投票に終わったことをきっかけに、「ポスト安倍」を目指して発足した石破派。現在19人の小所帯ながら、「一騎当千」の政策集団として一定の存在感を示した。さらに石破氏が安全保障政策や「森友・加計学園」問題などで「正論」を唱える姿は、無党派や野党支持層からも評価され、世論調査では「次の首相候補」の上位に挙げられた。しかし、自民党内では、「安倍政権の後ろから鉄砲を撃つ存在」とのレッテルが貼られ、いつしか党内では「孤高の存在」と見られるようになった。
9月の総裁選で獲得した国会議員票はたった26票(得票率6%)。安倍晋三前首相との一騎打ちだった18年総裁選の73票(得票率18%)から大幅に減らし、政権に危機が訪れた際の「受け皿」を狙う「対立路線」の限界は明白になった。
その後、石破氏は9月下旬から10月中旬に所属議員と個別に面談し、今後の派閥と自身の方向性について意見を聞いた。将来を見据えた若手からは「基礎体力をつけないといけない。派閥議員の数を増やすよう戦略的に動くべきだ」などの意見が寄せられた。ただし共通していたのは「このままでは同じことの繰り返しだ」との危機感で、来年の総裁選に向けた「主戦論」はかすんでいった。